最新記事
中露関係

中露蜜月と言うけれど、中国は金欠ロシアへの融資を何年も渋り続けている──露財務閣僚明かす

Russia Struggling to Secure Loans From China, Putin Ally Admits

2024年2月27日(火)17時09分
ブレンダン・コール

プーチン(右)「ねえお金貸して」、習「10年間検討してから」(2023年3月、モスクワ) Sputnik/Alexei Maishev/Kremlin via REUTERS

<中国官僚の手玉に取られているのか? 長年の交渉にも関わらず、中国は一度もロシアが求め続ける人民元建ての資金調達にウンと言わない>

ロシア政府は、中国と「長期の」協議に入っているが、中国人民元建て債の発行による資金調達に関して、まだ合意には至っていないと、ロシアのアントン・シルアノフ財務大臣が明かした。

 

ウクライナへの侵攻を理由に経済制裁を科されたロシアは、西側諸国から中国へ軸足を移そうとしており、対中国貿易の一大ブームが起きている。シルアノフによる今回のコメントは、こうした背景の中で発されたものだ。

人民元建て債を発行しようとするロシア政府の動きが勢いを増したのは2014年以降。ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナのクリミア半島を一方的に併合したことにより、西側諸国とロシアとの関係が急速に悪化した時期と重なる。

しかし、進展はこれまでほとんどない。2022年9月には、ロシアのティムール・マキシモフ財務次官から、何の合意にも至っていないとの発言があった。

ロシア政府は、中国の投資家からのマネーを引き寄せることで、経済制裁で撤退した西側資本の穴埋めをしたい考えだ。だが、財務大臣のシルアノフは2月26日、国営メディアのロシア通信(RIA)に対し、合意はまだだと述べた。

「中国のパートナーたちとの交渉は、長期にわたって続いている」とシルアノフは語った。「今のところ、決定した事項はない」

中ロ両国の間での最新の交渉ラウンドは2023年末に実施された、とシルアノフは述べたが、交渉に進展があったかについて明確な言及はなかった。

激増する軍事費

ロシアと中国の間の貿易額は、2023年に過去最多に達したが、両国の関係には軋轢も生じた。ロシア側の輸入業者によって用いられてきた中国の主な金融機関、浙江稠州商業銀行が、アメリカ主導の経済制裁を破る恐れから、ロシアでの事業を停止してしまったのだ。

ロシアは、欧州連合(EU)および先進7カ国(G7)が凍結しているロシア中央銀行の資産3000億ユーロ(約45兆円)の穴埋めを図ろうとしているが、一方で軍事費が激増しているロシアにとっては難題だ。

ロシア政府は、1兆6000億ルーブル(約2兆6100億円)の財政赤字に直面している。これは、国内借入、および石油・ガス収入を運用する政府系ファンド、ロシア国民福祉基金(NWF)からの借入で穴埋めされることになっている。

2024年1月に公開された、ロシア財務省発表のデータに関するブルームバーグの報道だが、ウクライナ侵攻前に8兆9000億ルーブル(現在のレートで約14.5兆円)あったNWFの手元流動性は、侵攻開始以降44%減少し、2023年末時点で約5兆ルーブル(同3兆円強)になっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 7
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中