最新記事
アウディーイウカ

アウディーイウカ制圧後、ロシア軍の攻撃は激減、戦線維持に不安

Ukraine War Map Shows Latest Russian Advances

2024年2月21日(水)15時19分
ブレンダン・コール

ショイグ国防省からアウディーイウカ掌握の報告を受けるプーチン(2月20日、クレムリン) Sputnik/Alexander Kazakov/Pool via REUTERS

<ロシア軍がアウディーイウカを掌握し、ウクライナ軍は撤退した。しかしロシア軍部隊は力を使い果たしている?>

ウクライナ東部の激戦地、ドネツク州アウディーイウカを制圧した後、周辺でのロシア軍による攻撃が大幅にスローダウンしていることが、現在の戦況を示す地図と共に報告されている。

ロシア軍に莫大な損失を強いた数カ月にわたる激戦を経て、ウクライナ軍は2月17日、アウディーイウカからの撤退を発表した。ロシアのメディアはこれを、ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナ全面侵攻において、2023年5月にドネツク州バフムトを制圧して以来最大の成果だと盛んに喧伝している。

 

アウディーイウカ制圧から数日経った現在、ロシア軍は、部隊の再編成と市街からの撤収作業を行っているが、ロシア軍による攻撃は大幅に減少している。これは、ウクライナのタヴリースク部隊のドミトロ・リホヴィ報道官が伝えたものだ。同報道官は、この地域におけるロシア軍の爆撃など上空での活動が、以前よりかなり少なくなっていると指摘した。

複数のウクライナ軍幹部は、同国部隊は、事前に準備され要塞化された、新たな防衛線まで退却したと述べた。

アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)は2月19日、ロシア軍はおそらく、しばし戦闘を休止したのちにアウディーイウカ方面で再び大規模な攻撃作戦に出るか、あるいは、前線の他の区域から応援部隊を移送し、アウディーイウカ付近の戦線が限界点(攻勢をもはや継続できなくなる状況)に達するのを防ごうとする、との見方を示した。

増援はあるか

ロシア軍は、増援に使える予備隊を前線の他の場所に保有しているが、ISWでは、今のところロシア軍司令部が、これらの兵力をアウディーイウカに向けて移動させている兆候は見当たらないとしている。

ISWによって作成された最新版の地図の1つは、2月17日に投稿された位置情報を手かがりに、ロシア軍がアウディーイウカの北、西、南東で前進している状況を示している。さらにこの地図からは、アウディーイウカでウクライナ軍が防衛線を敷いていたコークス工場をロシア軍が制圧したことや、ウクライナの防衛線が現在、侵攻前には3万人が暮らしていたこの町の西に設けられていることもわかる。

ukrainemap.png

ウクライナ軍のリホヴィ報道官は、ロシア軍司令部が今後まもなく、アウディーイウカ付近に駐留する部隊を、前線の他の区域に移動させるだろうと述べた。一方、ウクライナ軍ホールツィツャ部隊の報道官、イリヤ・イェヴラッシュ大尉は、実際に移動が実行に移されるまでには、少なくとも1週間はかかるだろうと述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中