ウクライナ戦争開戦から2年、NATO軍の元最高司令官が語る「敗北のシナリオ」
NO MORE AID, PUTIN WINS
戦争が3年目に突入するなか、一部の米議員からはゼレンスキーに対し、ロシアと交渉して領土を割譲するよう求める声も高まっている。
だがワシントンのシンクタンク戦争研究所(ISW)の昨年12月の予測によれば、戦争が「凍結」された場合、あるいはもっと望ましくない「プーチン勝利」の場合には、悲惨な結果が待っている。
ウクライナが敗れれば、NATO圏の国境に沿う黒海から北極海に至る地域まで、ロシア軍の接近を許すことになる。
しかもロシア軍はウクライナ侵攻前より規模を拡大し、戦闘経験も積んでいる。
つまり、米軍のステルス機にしか突破できない高度な防空システムが必要になり、中国に対する抑止力が手薄になる。
さらにISWは、戦争が「凍結」されれば悪影響をもたらすと指摘する。
プーチンに対し、新たな戦争を仕掛けたり、NATOとの対決に備える猶予を与えることになるためだ。
「ウクライナの戦いは、アメリカにとっての戦いだ」と、マリナウスキーは言う。
「われわれはプーチンの勝利を見たくない。ウクライナとアメリカ、そして同盟諸国がこの戦争を今後1年以内に望ましい形で終結させられるかは、ウクライナ支援法案が成立するかどうかに懸かっている」
ウクライナは昨年6月に反転攻勢を開始した。
しかしウクライナや、武器を供与してきた同盟国が期待したような結果は得られなかった。
「何よりも、制空権を確保することが重要だ」と、ブリードラブは言う。
「われわれはウクライナが制空権を確保するために必要な支援を提供していない」
さらにブリードラブは、ウクライナには短距離兵器が提供されているものの、米陸軍戦術ミサイル(ATACMS)は最新版よりも能力面で劣る古い型が提供されていると語った。
「われわれはウクライナの勝利に必要なものではなく、戦いを続けるのに十分なものしか提供していない」と、彼は言う。
ヨーロッパ外交評議会のグスタフ・グレッセル上級研究員は、装甲機動車の提供が遅れたことがウクライナの反転攻勢の妨げになったと本誌に語った。
グレッセルによれば、アメリカ製のブラッドリー歩兵戦闘車やドイツ製のレオパルト戦車が供与されたものの、ウクライナ軍機械化旅団の結束や備えが今より優れていた段階で提供されていれば、もっと威力を発揮していただろうという。
東部ドネツク州バフムートでの戦いが長引いたために多くの経験豊富な兵士が失われたことも、ウクライナには大きな痛手だったと、彼は語った。
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