最新記事
ウクライナ侵攻

ロシア軍、ソコロフ司令官とゲラシモフ参謀長の死亡説を放置

Putin's Top Generals Have Gone Missing

2024年2月5日(月)18時20分
ニック・モルドワネク
プーチンとゲラシモフ

国防会議に出席するプーチン(左)とゲラシモフ。2023年9月のこの頃を最後にゲラシモフの姿は見られていない。Sputnik/Mikhail Klimentyev/Kremlin via REUTERS

<ウクライナのクリミアへの攻撃で命を落としたと噂されるソコロフとゲラシモフの生死について、政府の反応は鈍い>

昨年9月以降、ロシア軍の重要なポストを占める高官2人の消息が伝えられなくなっており、死亡説も取り沙汰されている。

1人はロシア黒海艦隊のビクトル・ソコロフ司令官。ウクライナ軍は9月下旬、クリミア半島にある同艦隊本部へのミサイル攻撃を行い、ソコロフを含む34人が死亡したと発表した。ソコロフはウクライナ軍にとって重要なターゲットとされていた。

 

また、ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長も、今年初めにクリミア半島にあるロシア軍指揮所へのウクライナ軍の攻撃によって死亡したという説が出ている。この時の攻撃は、セバストポリ近くとエフパトリア 近郊の軍部隊に向けて行われたという。

「過去133日間姿を見せていないソコロフ司令官は、55日間姿を見せていないゲラシモフ将軍とどこかでたぶん『協議中』なのだろう」と、軍事専門家でマーシーハースト大学准教授のフレッド・ホフマンはX(旧ツイッター)に2日、皮肉たっぷりに投稿した。

【動画】「健在」をアピールするも、真偽について議論は二分...公開されたカディロフの新たな動画

本誌はロシアとウクライナ両国の国防省にコメントを電子メールで求めたが回答は得られていない。

ロシア当局は、9月の攻撃ではセバストポリの建物1棟が被害を受け、将校が1人「行方不明」になっただけだとしているが、ソコロフが死んだとする噂にブレーキをかけることができずにいる。

生存示す写真は公開したが......

またロシア国防省は問題の攻撃の後、テレグラムにソコロフが写っているとされる会議の画像を投稿した。その直前には、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官が記者団に対し「黒海艦隊のソコロフ司令官が死亡したとされる件についての」情報はないと答えている。

ウクライナ側とロシア側の主張はかくのごとく異なっていたわけだが、ソコロフの「死」そのものには当のウクライナ軍内部からも疑問視する声が上がっている。

ウクライナの情報機関を率いるキーロ・ブダノフ少将は、政府の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、9月の攻撃ではロシア軍幹部数人が負傷したものの、ソコロフの死は確認できていないと述べた。ちなみに黒海艦隊では、昨年4月に旗艦のモスクワがウクライナ軍の攻撃で沈没。ソコロフは7月に司令官に任命されたばかりだった。

一方、ゲラシモフ死亡説の出所はXで流れた真偽不明の噂で、ロシアのチャンネル「普通のツァーリズム」の投稿とされる画像がきっかけだった。

「普通のツァーリズム」は、ゲラシモフがクリミア半島で起きた攻撃で死亡したと伝えていた。

ビジネス
栄養価の高い「どじょう」を休耕田で養殖し、来たるべき日本の食糧危機に立ち向かう
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中