ロシアが人気絶大の反体制バンドBi-2を西側のタイで逮捕、これは大きな危機の始まりだ
US Ally Under Fire for Helping Putin Hunt Down Anti-War Russians Abroad

Bi-2は、ロシアで最も成功したバンドの1つ(2023年10月、エストニアのタリン)Photo: Konstantin Sednev / Postimees Grupp
<タイにいても安全ではないとすれば、西側のどこにいてもロシアの意向でいつ逮捕されるかわからない世界に扉を開くことになりかねない>
ウラジーミル・プーチンによるウクライナへの全面侵攻に批判的なロシアのロックバンドが、タイで逮捕された。これにより、ロシア政府による反体制派の弾圧は国境を越えて広がっているという懸念が高まっている。
元米外交官らは米国務省に対して、アメリカの同盟国であるはずのタイに、逮捕されたBi-2のメンバーを解放するよう要請することを求めている。同メンバーらは、プーケットでの不法就労を理由にタイ入国管理局に拘束されている。
Bi-2は、過去30年間で最も成功したロシアのロックバンドの一つであり、その影響力をウクライナ戦争反対の活動に活かしてきた。リードボーカルのイゴール・ボルトニクは、ネット上でプーチンを批判した後、ロシア当局から「外国のエージェント」に指定された。
ボルトニクは2023年5月、自身のインスタグラムに、「プーチンのロシアが今やっていることすべてに嫌悪感しかない」ため、ロシアには戻らないと書き込んだ。
西側諸国はタイに圧力を
Bi-2のメンバー7人は1月24日、プーケットでのツアー中、無許可で公演を行ったとして逮捕された。Bi-2はバンドのフェイスブックページで、国外退去を命じられたことを明かし、「外圧が私たちの拘束に大きな役割を果たしている」と述べた。今回の逮捕にロシアが関与している証拠はないものの、ロシア政府の影響力が働いているのではないかという懸念が高まっている。
2012年から2014年まで米国大使としてロシアに駐在していたマイケル・マクフォールは1月31日、「これは本当に深刻だ。プーチンが世界中で人々を逮捕することを許すわけにはいかない」とXに投稿した。「タイはアメリカの同盟国であり、米国務省はこの問題で戦う必要がある。放っておけば、非常にまずい前例になりかねない」
マクフォールの投稿は、米国生まれの投資家であり、ロシアの人権問題やマネーロンダリング(資金洗浄)問題の調査に取り組むビル・ブラウダーによって共有された。「これはとんでもないことだ。西側諸国はタイに対して大きな圧力をかけ、無実のミュージシャンをロシアに帰国させて刑務所行き(あるいは、それより悪い事態)にしないよう図るべきだ」とブラウダーは書いている。
人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、バンドメンバー7人のうち3人は二重国籍ではなく、ロシアのパスポートでタイに渡航しているため、もしロシアに強制送還されたら、ロシアで迫害を受ける可能性があると懸念している。残りの4人はイスラエルのパスポートを持っており、そのうち1人はオーストラリア国籍も持っている。
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