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能登半島地震

発災10日後も寝具が届かず...能登入りした医師が断言、災害支援成功に不可欠な「ある人材」とは?

A LESSON FOR JAPAN

2024年1月26日(金)18時00分
國井 修(医師、公益社団法人「グローバルヘルス技術振興基金」CEO)

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珠洲市の避難所(1月3日) AP/AFLO

鍵は「ロジスティシャン」

能登半島地震発生から4日後の1月5日。私は気が付けば被災地に向かっていた。これまで国内外でユニセフ(国連児童基金)や国際協力機構(JICA)、大学、NGOを通じて地震、津波、洪水、紛争、テロなどの緊急支援に関わってきた。テレビで現場の映像を見ているだけで居ても立ってもいられない。一度でも大規模災害発生後の現場を体験した人なら、おそらく同様の衝動に駆られたことだろう。今回は国際協力NGOピースウィンズ・ジャパン(PWJ)のアドバイザーとして現地入りした。

まず石川県庁内に設置された災害派遣医療チーム(DMAT)本部を訪れ、近藤久禎本部長などから情報収集をし、DMATの調整会議などに参加。DMAT関連の支援物資の物流の問題点と、被災地から要配慮者などを搬送する2次避難についてアドバイスを求められた。早速、DMATのロジスティクス班と県の担当者と一緒に金沢市の石川県産業展示館にある支援物資集配所と、いしかわ総合スポーツセンターの1.5次避難所を見て回った。

「物資の調達から必要な消費者の手に届くまで」の一連の流れを一括で管理するシステムをロジスティクス(ロジ)と言う。被災者の最低限のニーズを一刻も早く満たし、彼らの命や健康を守り、災害関連死などを最小限に抑えるためにも、ロジは緊急支援の要と言っても過言ではない。

産業展示館には国内のさまざまな場所から支援物資が到着し、それを自衛隊が中心になって被災地へ搬送している。担当者に聞くと、企業を含めて多くの義援物資の寄付依頼があり、また被災地からは多くの要望も来ているが、そのマッチングが難しい。初めは被災地からの情報も届かなかったため、「プッシュ型」で水や食料などの必需品が送られた。だが現地ではそれらが滞り、送るのを待ってほしいとの声もある。保健医療関連物資については、現地のニーズも配送状況もどうなっているかよく分からない、という答えだった。

このような事態は緊急支援の際にはよく起こる。現地では水・食料・毛布・仮設トイレなど足りないもの、必要なものはいくらでもある。また、それらを提供したいという政府・自治体・企業などもたくさんある。しかし、これらの情報が十分に把握できず、または情報が錯綜して、迅速にマッチングできない、またはいろいろな場所で滞る。

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