イランがパキスタン領内攻撃→パキスタンがイラン領内の武装勢力を報復攻撃、専門家「エスカレートする可能性」
1月18日、パキスタン外務省は18日、隣接するイランのシスタンバルチェスタン州で武装勢力を標的に軍事攻撃を行ったと明らかにした。写真はイランの国旗。2012年2月撮影(2024年 ロイター/Morteza Nikoubazl)
パキスタン外務省は18日、隣接するイランのシスタンバルチェスタン州で武装勢力を標的に軍事攻撃を行ったと明らかにした。情報活動に基づいた作戦で、複数の「テロリスト」が死亡したと声明で述べた。
イランは16日、パキスタン領内の武装組織拠点を攻撃。パキスタンは子ども2人が死亡したとしていた。17日にはパキスタン外務省が駐イラン大使を召還すると発表した。
イランの攻撃とパキスタンの報復攻撃は、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争を受けた中東情勢不安定化への懸念を深めるものだ。
イランメディアによると、シスタンバルチェスタン州の村に複数のミサイルが着弾し、少なくとも9人が死亡した。これに先立つ報道では女性3人と子ども4人が死亡し、いずれもイラン人ではないとしていた。
イランのタスニム通信は匿名の当局者の話として、イラン政府が攻撃についての説明をパキスタン側に求めたと伝えた。
パキスタン外務省は、イランの主権と領土の一体性を完全に尊重すると強調し、「この日の攻撃の唯一の目的はパキスタンの国益と安全保障だ」とした。
パキスタン情報当局筋によると、攻撃は軍用機で実施。標的となったのはパキスタン南西部バルチスタン州の分離独立を求める「バルチスタン解放戦線(BLF)」傘下の武装勢力という。
また、パキスタンのカカール暫定首相は、世界経済フォーラムが開かれているダボス滞在を切り上げて帰国する。外務省報道官が明らかにした。
今回の報復攻撃後のパキスタンのコメントは対立を収めたいという意思の表れだが、専門家は事態が収拾できなくなる可能性を警告している。
米国平和研究所で南アジア安全保障を担当するアスファンディル・ミール氏はロイターに、「イランがパキスタンを攻撃する動機は依然として不明瞭だが、この地域におけるイランの幅広い行動に照らせば事態はエスカレートする可能性がある」と指摘。「パキスタンがイラン領内を攻撃して一線を越えたことはイランで不安を引き起こすだろう。これは米国やイスラエルでさえ越えないようにしている一線だ」と述べた。
<資源豊富なバルチスタン州、中国企業も進出>
パキスタンのバルチスタン州は、面積はパキスタンで最大でガスや鉱物などの資源に富む。
バルチスタン解放戦線(BLF)などの武装勢力は、中央政府が同州の資源を搾取しているとして、長らく独立を求めて抵抗活動を展開してきた。武装勢力はしばしばガス事業やインフラ施設に対し攻撃を仕掛けている。
バルチスタン州は、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の主要拠点でもあり、中国が資源開発プロジェクトや国際空港の建設事業を展開している。BLFなどの武装勢力は、中国関連事業も攻撃の対象とし、現地で中国人が殺害される事件も起きている。
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