ロシアの貴重なA-50早期警戒管制機を撃墜したのはウクライナ軍ではなく味方の誤射だった?
Russians Slam Own Air Defenses as 'Most Potent Threat' to Putin's Air Force
形も役割も米軍のAWACS(早期警戒管制機)に似たA-50 Hindustan Times/YouTube
<ロシア空軍にとって最大の脅威はウクライナ軍ではなく自国の防空部隊だ、とロシアのミリブロガーたちは嘆く>
ロシアのA-50早期警戒管制機がアゾフ海上空で撃墜されたと報じられたことについて、ロシアのミリブロガーたちは、ロシア軍の防空部隊が誤って撃ち落としたと主張している。
【動画】A-50早期警戒管制機とイリューシン22の最期を映像で見る(ただし未確認)
1月15日、ウクライナ軍がA-50を撃墜し、空中司令機「イリューシン22(Il-22M)」に損傷を与えたと発表すると、ロシア空軍とつながりがあると見られるテレグラムチャンネル「Fighterbomber(ファイターボマー)」は、撃墜したのはウクライナ軍ではないとする長い記事を投稿した。
ロシア国防省とつながりのあるテレグラムチャンネル「Rybar(ライバー)」も、A-50は「味方の誤射」によって撃墜された可能性があると述べている。
ロシア政府はそうした主張を裏付ける情報はないと述べ、本誌がコメントを求めたロシア国防省からは返答が得られていない。
ウクライナにとっては大金星
ファイターボマーは、「当方の情報によれば、(ウクライナは)A-50機の喪失には関係していない」と述べる。
「今のロシア航空宇宙軍にとって最悪かつ最も恐ろしい脅威は、自国の防空部隊だ」とファイターボマーは言う。「早急に対処が必要だ」
A-50は旧ソ連時代の偵察機で、攻撃に備えたり、攻撃の阻止するのに用いられる。そうした航空機を失うことは空軍の作戦上、大きな痛手だ。コストも巨額だ。ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティーのロシア語サービス「ラジオ・スボボダ」は政府のデータを引用し、1機あたりの搭乗員は15名、コストは推定3億3000万ドルだと伝えている。
「世界の現代軍用機目録(WDMMA)」データベースの数字によれば、ロシア空軍は、ウクライナへの全面侵攻以前に15機のA-50を保有していた。うち1機は2023年2月に、無人航空機(ドローン)の攻撃により大きく損傷したと報じられた。
ウクライナのジャーナリスト、イリヤ・ポノマレンコはX(旧ツイッター)上で、事実と確認されれば、A-50の撃墜は「ウクライナ空軍のこれまでで最大の勝利」となる、と述べている。
ウクライナの軍事アナリスト、オレクシー・コピツコは、A-50の撃墜とIl-22Mの損傷について、ロシアの「従軍記者」は、「起きたことの重大性を軽く見せる」ために、「味方の誤射」によるものと説明しようとしていると警告した。
「だがそれも、きわめてつらいことが起きたという事実を裏づけているにすぎない」。コピツコは、自身のソーシャルメディア・チャンネルでそう述べている。
「ロシア政府にしてみれば、前線のはるか後方で、貴重な偵察機を撃墜できるウクライナの能力について、ロシア国民に知らせるわけにはいかない。もし知れば、大いに士気をくじくことになるからだ」とコピツコは言う。「技術的な失敗や軍の怠慢のほうが、ロシア連邦にとってはまだ自然な説明になる」
(翻訳:ガリレオ)
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら