最新記事
ビーガン

「ビーガン猫」こそ健康長寿? 「完全菜食フード」が健康リスクを軽減する可能性

Cats Going Vegan

2023年12月25日(月)13時10分
ロビン・ホワイト(本誌自然・環境担当)
ビーガンフードで猫の健康だけでなく環境問題対策にも光明が POKPAK05/ISTOCK

ビーガンフードで猫の健康だけでなく環境問題対策にも光明が POKPAK05/ISTOCK

<肉食のはずの猫の健康に菜食が良いという最新研究>

猫の好物といえば、肉がたっぷり入ったおやつ、のはず。だが最近、ビーガン(完全菜食)フードが実は猫の健康リスクを軽減する可能性があることが科学者らによって報告された。

9月に発表された英ウィンチェスター大学の研究によると、ビーガンフードを与えた猫のほうが肉をベースにした餌を与えた猫より健康状態が全体的に良好だったという。

猫は本来、肉食動物だが、市販のキャットフードには植物やキノコ由来など代替タンパク質を含む製品がある。従来、専門家たちはこうした代替食品は猫に好ましくないと懸念を示してきた。

科学誌PLOS ONEに掲載された今回の論文では、飼い猫に肉系の餌と、ビーガンフードを与えた飼い主たちそれぞれにアンケート調査を実施。同大学のアンドルー・ナイト教授(動物福祉・倫理学)らが1369人の飼い主からの回答を分析した。調査ではそれぞれの餌を与えた場合の猫の健康について、さまざまな質問をした。

年齢や不妊手術の有無など他の健康要因も考慮に入れて回答を比較したところ、ビーガンの猫は肉を食べた猫より頻繁に獣医にかかる可能性が約7%低く、投薬もおよそ15%少なかった。体調不良の猫1匹当たりが抱える健康障害の数も、約16%少なかった。これらの数値は統計的に有意ではなかったものの、明らかな傾向は示しているという。

「たとえ統計的に有意だったとしても効果が小さい場合もある」と、ナイトは本誌に語る。「最新の統計学的手法を用いると、われわれの調査結果は完全菜食の猫のほうが肉食の猫より健康状態がいいと示していることになる」

似たような結論に達した研究は過去にもある。だが今回の報告を裏付けるためには、餌の栄養素含有量の分析など、さらなる研究が待たれる。

研究が進めば猫の健康改善だけでなく、社会問題である畜産業の環境負荷をペットフードの改良を通じて軽減する道も開けるかもしれない。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訂正-仏ロクシタン、株式を非公開化 18億米ドルで

ビジネス

商船三井、25年3月期純利益は減益予想 

ワールド

アジア太平洋、軟着陸の見込み高まる インフレ低下で

ワールド

中国4月PMI、製造業・非製造業ともに拡大ペース鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中