最新記事
医療

「臓器」の加齢にご用心...老化の進行で生じるリスクとは?

Faster-Aging Organs

2023年12月22日(金)18時10分
ジェス・トムソン(科学ライター)
健康そうに見えても内臓は一足先に衰えているかも MAGIC MINE/ISTOCK

健康そうに見えても内臓は一足先に衰えているかも MAGIC MINE/ISTOCK

<内臓の老化が早すぎると発病リスクが高まる>

老いは誰にでも、私たちの臓器にも訪れる。ただし臓器によって老いのペースは異なるらしい。2023年12月6日付で科学誌ネイチャーに発表された論文によると、健康そうに見える50歳以上の人の約2割で、何らかの臓器に早すぎる老化が起きている。

論文の著者でスタンフォード大学教授のトニー・ワイスコレイ(神経学)によれば、既に動物実験では「同じ生体内でも臓器によって老化の進み具合が異なる」ことが知られていた。そして今回、画像診断や血液の化学的分析などから、同じことが人間にも言えることが分かったという。

「遺伝や環境、生活習慣などによって一部の臓器の老化が加速され、ある限界点を超えると病気になると考えられる」と、ワイスコレイは言う。

「50歳以上の人の18.4%で、少なくとも1つの臓器に過剰な老化が見られた。そういう人は、15年以内に当該臓器の病気になるリスクが高い」

さらに、約60人に1人は老化過剰な臓器が2つ以上あり、そういう人の「死亡リスクは健康な臓器を持つ人の6.5倍」だという。

そこで研究チームはAI(人工知能)のアルゴリズムを用いて、20~90歳の人々を対象に約5000種類の血中タンパク質を調べた。すると臓器の老化の程度を示す約1000種類のタンパク質が特定された。

これらの血中タンパク質の濃度を調べれば、臓器の老化の進み具合が分かる。具体的には心臓や肺、肝臓や腎臓、脳などの老化具合を判定できる。ちなみに心臓の老化が進んだ人は心不全の発症リスクが2.5倍、脳の老化が進んだ人は認知機能の低下リスクが1.8倍になるそうだ。

もちろん、判定の精度を高める必要はあるが、臓器年齢の測定は健康状態をチェックし、将来的な発病リスクを予測するのに役立つ。病気になってからでは遅い。加齢による臓器の衰えに早めに気付き、いわゆる「未病」段階で手を打って発病を防ぐ。それこそが真の医療の姿だ。

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中