最新記事
中東

「ガザ地区の完全な支配権を取り戻す用意がある」パレスチナ高官...それでもなぜ「戦後ビジョン」が見えないのか【本誌独占スクープ】

Biden’s Plan Wins Backing

2023年12月13日(水)13時05分
ダニエル・ブッシュ(ホワイトハウス担当)

231219P36_GZT_03v2.jpg

西岸地区で会談したブリンケン(左)とアッバス(11月30日) SAUL LOEBーPOOL/REUTERS

米オバマ政権でイラクとトルコ駐在の大使を歴任したジェームズ・ジェフリーは、最も厄介な問題はイランがハマスやレバノンの武装組織ヒズボラを支援していることへの対処だと指摘する。

「バイデン政権の解決案の成功に現実的な可能性を持たせるには、2国家解決やパレスチナ自治政府の効果を薄めようとするイランの悪質な影響力や行動に対抗する必要がある」

ホワイトハウスの方針に詳しいある人物は匿名を条件に取材に応じ、バイデン政権の当局者らは困難な問題が山積していることを理解しており、提案する和平が実現する可能性が低いことを認識していると語った。

「バイデン政権は、これが解決策にならない可能性を知っている。しかし、可能性のある解決策はほかにない」と、この人物は言う。

ブリンケン発言が転機

パレスチナ自治政府の下、ガザとヨルダン川西岸を再統合するというバイデン政権の戦後ビジョンは、戦闘が始まって1カ月後にアントニー・ブリンケン米国務長官が明らかにしたものだ。バイデンはこの時点で既にイスラエルを訪問しており、2国家解決への支持も改めて表明していた。

だが11月8日のブリンケンのこの発言が、今回の戦争に対するバイデン政権の転換点となった。米政府の焦点が「イスラエルの自衛権の支持」から、「イスラエルに対し、ガザの民間人の保護を求めてより公に圧力をかけること」に移ったからだ。

これ以降、バイデン政権はガザの「デイ・アフター(戦争終結後)」計画にますます重点を置くようになっている。これはホワイトハウスが、より長期的な政治的解決を模索していることの表れだ。

1週間に及んだ戦闘休止が終了した後、イスラエルはガザ南部でハマスに対する空爆や地上作戦を強化。ガザ保健当局によれば、戦争開始以降のガザの犠牲者数は1万7000人以上に達している。

戦闘が激化するなか、ハリスは12月2日、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)出席のために訪れたドバイでの演説で、ガザに関するアメリカの計画に言及。

中東の将来の安定はパレスチナ自治政府が「権威を取り戻し」てガザとヨルダン川西岸を統治すること、そして両地域の治安を管理することに懸かっていると述べた。

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナに無人機攻撃、1人死亡 エネ施設

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中