「ガザ地区の完全な支配権を取り戻す用意がある」パレスチナ高官...それでもなぜ「戦後ビジョン」が見えないのか【本誌独占スクープ】
Biden’s Plan Wins Backing
戦闘休止期間が終わり、ガザに再び爆音と煙が上がった(12月6日) ATHIT PERAWONGMETHAーREUTERS
<米政府の提案を受け入れても、和平がなお遠い理由について>
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって2カ月を迎える節目のタイミングで、本誌は大きなスクープを手にした。
パレスチナ自治政府は、この戦争の終結後にガザ地区の完全な支配権を取り戻す用意がある。さらに、より広範で長期的な和平合意の一環として、2006年以降初めての議会選挙を実施する準備もある──パレスチナ高官は本誌にそう語った。
国際社会がガザの再建を支持し、将来的に独立したパレスチナ国家とイスラエルが共存する「2国家解決」の路線に合意するようイスラエルに働きかければ、パレスチナ自治政府は米バイデン政権が提案するガザとヨルダン川西岸を自治政府の管理下に再統一する案を受け入れる......。
PLO執行委員会の一員で、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長の盟友であるアハマド・マジダラニは12月6日、ヨルダン川西岸ラマラにあるパレスチナ自治政府のオフィスで、そう述べた。
「私たちは自由で民主的な選挙によって、政治改革を進める」と、マジダラニは言った。「イスラエルの侵攻を利用することはない。あくまで政治的に解決すべき問題だ」
戦争の終結後、自治政府がガザの統治を開始し、1~2年の「移行期間」を経て選挙を行うことも可能だと、マジダラニは主張する。さらに彼は、現在88歳のアッバスがその時点で議長を務めている場合に、再選を目指すかどうかはアッバスおよび彼の政党が決めることだと付け加えた。
カマラ・ハリス米副大統領が戦争終結後のガザ統治はパレスチナ自治政府が行う、という米政府の見解を示したのが、12月2日のこと。マジダラニはハリスの発言に対し、パレスチナ自治政府の幹部として初めて言及した。
だがマジダラニの主張には、パレスチナ自治政府とイスラエルが平行線をたどるとみられる大きな要素が含まれている。それは、アメリカが進めている紛争の政治的解決に向けた取り組みへの障害がいかに大きいかを物語る。
何よりもまず、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の眼中に、2国家解決策はない。イスラエルの現政権は同国史上最も右寄りとされ、政権内の宗教的保守派はヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植地拡大を公然と支持している。
だが同地区の入植地拡大は、国際法上は違法だ。アメリカをはじめ西側諸国からは、パレスチナ国家の創設を目指す上でこの問題が障壁になっていると、イスラエルを批判する声が上がっている。