最新記事
ガザ侵攻

ハマスの地下トンネルに海水を注入する作戦、イスラエルは本当に決行するか

Will Israel Flood Gaza Tunnels To Force Out Hamas? What We Know

2023年12月7日(木)17時00分
デービッド・ブレナン

何より今もガザに残る人質137人が溺死する懸念もある。人質はハマスだけでなく他の武装組織の監視下に置かれている可能性があるが、これらの組織はいずれもこれまで物資の隠匿場所と幹部の隠れ家として、また人質の拘留場所としてトンネルを利用してきた。

2021年から2023年1月までイスラエルの国家安全保障会議を率いたエヤル・フラタは5日のブリーフィングで、「さほど危険ではない方法で、トンネル問題を解決する創造的なアイデアが出されることを期待している。これは重要だ」と述べた。

「水は土壌に染み込み、再び海に流れると思われる。(トンネルの)床はおそらく土のままで、コンクリートではないからだ。何であれ、そこに注入したものは長くはとどまらないだろう」

トンネル網がどこまで広がっているかは不明だが、イスラエル軍の推定によると、総延長は約500キロに上る。一部の区間は深さ50メートルにも達し、車が走れるスペースがあるという。

 

ハマスの抹殺に執著

ハマスが戦略的に活用してきたトンネル網は、イスラエル軍の攻撃の主要なターゲットとなっている。2007年にガザが封鎖されて以来、ハマスはトンネル経由で密かに物資を入手し、ガザとの境界沿いにあるイスラエル軍の施設に繰り返し攻撃を仕掛けてきた。そのためイスラエル軍は過去にも、ガザに侵攻するたびにトンネルを見つけて破壊を試みた。

今回の侵攻では、イスラエル軍はハマスの軍事部門をたたきつぶし、ハマスによるガザ統治を終結させようとしている。今はガザ第2の都市である南部のハンユニスに侵攻中だ。ここはハマスの政治指導者であるヤヒヤ・シンワールと軍事部門の司令官のムハンマド・デイフの出身地で、根城でもあるとされる。

「われわれは南部に向かい、引き続きガザ地区にあるハマスのインフラを全て破壊しようとしている」と、レビーは5日に述べた。「テロ活動のインフラも、統治インフラも、何一つ残さず全てたたきつぶす。トンネル網の隅々にいたるまで破壊し尽くし、指揮官は1人残らず抹殺する。なぜならこの戦争の目的はハマスを地上から消し去ること。10月7日の大虐殺を行ったテロ組織に完全に勝利することだからだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

将来の利下げ回数、賃金など次第 FRBに左右されず

ビジネス

米新規失業保険申請23.1万件、予想以上に増加 約

ワールド

イスラエル、戦争の目的達成に必要なことは何でも実施

ワールド

フーシ派指導者、イスラエル物資輸送に関わる全船舶を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 3

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 4

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 5

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「高齢者は粗食にしたほうがよい」は大間違い、肉を…

  • 10

    総選挙大勝、それでも韓国進歩派に走る深い断層線

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中