【独白】ヨルダン川西岸で激化する、イスラエル人入植者によるパレスチナ人への暴力行為...住民が語るその実態
“LEAVE OR DIE”
ヨルダン川西岸でイスラエルの警察ともみ合うパレスチナの老人 MUSSA QAWASMAーREUTERS
<「私には未来が見えない。それでも自由主義世界の良心がこの状況を変え一筋の希望の光を見せてくれると信じ、どうにか私たちは生きている」イスラエルの人権擁護団体の職員は取材にこう語った>
パレスチナ自治区ガザ地区で戦闘が続くなか、ヨルダン川西岸ではイスラエル人入植者によるパレスチナ人への暴力行為が激しさを増している。イスラエルの人権擁護団体ブツェレムの職員で西岸に住むナセル・ナワジャにスレート誌記者のアイマン・イスマイルが取材し、実態を聞いた。以下はナワジャの話をイスマイルが書き起こし、編集したものだ。
イスラエル人入植者はまるで兵士だ。パレスチナ人への襲撃作戦を遂行しようと、軍服姿で家々に夜襲をかける。白昼堂々と来ることもある。私たちを殴り、暴力行為が記録されないようにスマホを取り上げ、踏みつぶし、金品を奪う。そして最後には決まってこう脅す。「24時間以内に出ていかなければ撃ち殺す」
彼らは既に6つの村から、全住民を力ずくで退去させた。
私は生まれたときから西岸C地区のスシヤ村で暮らしている。パレスチナ人の小さな村だ。世界の目がガザに向いているのをいいことに、入植者たちはテロと暴力でC地区を支配し、土地を乗っ取ろうとしている。彼らは逮捕されるべき犯罪者だが、今では彼らが法律と化している。
3年前から暴力は日に日に増えてきた。入植地の近くで暮らしていれば、乱暴な連中の顔は分かる。4日前の夜、彼らは私の近所の家を襲い、男の住人4人を銃で脅して外に追い立てた。そして家の所有者の頭にM16自動小銃を突き付け、「死にたくなければ出ていけ」と恫喝した。
これほど恐ろしい思いをするのは初めてだ。イスラエルの警察に助けを求めたが、今は戦時だから何もできないとあしらわれた。戦争が起きてから増えたのは確かだが、暴力自体はイスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲を仕掛けた10月7日の前から存在していた。
10月16日、1人の入植者がブルドーザーで私たちの村に押し入り、その様子をイスラエル軍の兵士たちはただ見ていた。以来、村は完全に包囲されている。水も医療も物資もなく、薬も手に入らない。入植者が道路を封鎖しテロ行為を行うので、子供は学校にも行けない。
彼らは道路を破壊し、オリーブ畑の木々を根こそぎにし、井戸とソーラーパネルを壊した。こうした狼藉を働く入植者をイスラエル軍は保護し、警察は見て見ぬふりをする。
パレスチナ人の命は軽いから、反撃どころか抗議すらできない。文句を言えば、その場で撃たれる。