目標だった「福田ドクトリン」は今や現実に 日本とASEAN50年の歩みと、これからの協力関係
ASEAN加盟10カ国の国旗 nuwatphoto-Shutterstock
<総人口6.8億人を擁し、目覚ましい経済成長を遂げたASEAN。日本およびJICAはこの地域の発展にどう関わってきたのか。50年にわたる協力を振り返ると同時に、現在の重点領域、さらには今後日本がASEANから期待されることまで、JICA東南アジア・大洋州部の早川友歩部長に聞いた>
日本とASEAN(東南アジア諸国連合)は今年、友好協力50周年を迎えた。この機をとらえ、日本およびJICAがASEANと共に築いてきた信頼と発展の足跡を振り返るとともに、未来に向けたパートナーシップ像について考えたい。今回は、2000年代初頭に3年間ベトナム・ハノイに駐在し、現在はJICA東南アジア・大洋州部で部長を務める早川友歩氏に話を聞いた。
想像を超える発展を遂げたASEAN地域
総人口6.8億人を擁する東南アジア。現在、域内10カ国で構成されるASEANは、1967年に地域の経済成長や政治的安定の確保を目的に設立され、言語や民族、文化、風土、政治体制が異なる中、各国が互いの多様性を尊重しながら、一つの共同体として地域の繁栄と安定を目指してきた。
東南アジアの経済成長は目覚ましく、GDP(国内総生産)の総額は、2002年の0.66兆ドルから2022年には3.6兆ドルに達するなど、一大経済圏へと成長。「開かれた世界の成長センター」として国際社会から注目されており、日本にとっても中国に次ぐ貿易相手となっている。
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──GDPの総額だけを見ても過去20年で5.5倍に拡大するなど、ASEANの成長は目を見張るものがあります。早川さんは20年ほど前、ベトナムに駐在していたそうですが、この間の発展ぶりをどう見ていますか。
早川 多くの日本人が想像している以上にASEAN諸国は発展している、というのが実感です。私は2002年から3年半ほど、ベトナムのハノイに駐在していたのですが、ちょうどその頃完成した市内中心部の小さなショッピングモールでは、まだエスカレーターが珍しく、子どもたちがわざわざ乗りに来ていました。今では大型ショッピングモールが立ち並び、1990年代後半には街中を行き交っていた多くの自転車もバイク、そして自動車にとって代わられました。ハノイにも、そして東南アジアの多くの大都市にも、いまや日本と大きく変わらない都会の風景が広がっています。
東京のJICA本部にもASEAN各国の政府関係者や民間セクターの方々が頻繁に訪れますが、皆さん迫力ある面持ちで、自信に満ち溢れています。経済的な発展や生活水準の向上だけでなく、人々の心持ちまで変わってきたように感じます。