「一線を越えた」北朝鮮の挑発を中国が黙認する謎
Nuclear Rumblings
偵察衛星の打ち上げを 見守る金正恩総書記 KCNAーREUTERS
<かつて北朝鮮の核実験について「遺憾の意」を表明した中国が、今回の軍事偵察衛星については沈黙。国境を長く接している中国が、なぜ目をつぶるのか?>
世界で安全保障上の複数の危機が深刻化するなか、その陰でまた別のいくつかの危機がひそかに進行している。
ウクライナの戦争は発生から間もなく2年になろうとしているが、いまだ終わりが見えない。イスラエルはイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃の報復としてパレスチナ自治区ガザ地区を攻撃し、民間人もハマス戦闘員もほぼ見境なく殺害している。
この2つの戦争が今、世界の政治と経済に大きな影響を及ぼしている。
しかし世界の注目がウクライナとイスラエルに集まるなかで、国際社会に以前からあった脅威もさらに悪化している。その1つが、北朝鮮の軍事的な挑発行為だ。
北朝鮮は11月21日夜、軍事偵察衛星を打ち上げた。国営メディアによれば、衛星は地球の周回軌道に入ったという。
8月の前回の打ち上げは、ロケットのエンジンに不具合が生じて失敗に終わった。近隣諸国は、北朝鮮がわずか3カ月でどのように問題を解決したかに関心を持っている。
これについて韓国軍当局者は、9月に行われたロシアと北朝鮮の首脳会談の後、ロシアが北朝鮮にエンジニアの派遣を含む技術支援を提供したと語った。
北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げは、国連安保理の決議に違反する。韓国やアメリカ、日本などは、すぐさまこれを非難した。
しかし北朝鮮と最も長く国境を接する中国は沈黙を守り、増大しつつある北の脅威に目をつぶっている。
2012年に北朝鮮が人工衛星を打ち上げた際、中国外務省は遺憾の意を表明した。
しかし今回の打ち上げについては「認識した」と述べるにとどまり、その後「朝鮮半島情勢が今日の状況に至ったのには理由がある」と、打ち上げを正当化するかのようなコメントを出した。
中国が黙認したために、北朝鮮は次の挑発行為の準備を進めることができる。