なぜアメリカは今、ウクライナのために「敗戦」を望むか
Does the US Actually Want Ukraine to Defeat Russia?
西側諸国に支援疲れが広まっていることは、ウクライナ側も感じ取っている。ウクライナ保安庁の元幹部で現在はウクライナ議会の顧問(国家安全保障・防衛・諜報担当)を務めるイワン・スチューパクは本誌に対して、「この戦争を終わらせるためには、ウクライナは1991年の国境線を回復すること以外にも幾つかの選択肢を議論しなければならないのかもしれない」と述べた。「もしかすると、妥協点もあるのかもしれない」
ロシアに対する不信感が、依然として大きな問題として立ちはだかる。「ロシアはこれまで一度も約束を守ったことがない」とスチューパクは言う。「どうやってロシアに約束を守らせるのか」
あからさまな侵略行為や領土占領を行ったロシアが何の罰も受けずに逃げおおせることになれば、「世界に向けて、法の秩序や国家主権を否定するメッセージを発信することにもなる」。
政治環境はロシアに有利?
だがロシアも既に戦略的に大きな敗北を喫していると、カプチャンは言う。「プーチンはウクライナで負けた。私たちはそれを知っている。彼はよくても、ウクライナの領土の一部とという『残念賞』を手にするだけだ」
ハースもカプチャンも、7月に行われたロシアのセルゲイ・ラブロフ外相との極秘会談に出席していたと報じられている。「現時点では、ロシアは事態は政治的に自分たちに有利な方向に進んでいるという前提で議論を行っていると思う」とハースは述べた。
ロシアはアメリカの世論調査を見て、ポピュリズムが高まりつつあることを知っている。プーチンの戦略は詰まるところ、一年後の米大統領戦でドナルド・トランプが勝利するかどうかを見届けることなのだろう、とハースは言う。
カプチャンは、ウクライナと西側諸国はプーチンのように「長期戦略」を考えるべきだとして、次のように指摘した。
「戦争を終わらせ、ウクライナを再び繁栄への軌道に乗せ、プーチンが退陣するのを待って、ロシアが和平交渉でウクライナに領土を返還する日が訪れることを期待する」のだ。
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