最新記事
ウクライナ情勢

なぜアメリカは今、ウクライナのために「敗戦」を望むか

Does the US Actually Want Ukraine to Defeat Russia?

2023年11月28日(火)18時48分
デービッド・ブレナン

ハースはさらにこう指摘した。「ウクライナが生き残るためには、ロシアが挫折や困難に直面することが重要な要素になる。現在の状況は、ウクライナと西側諸国にとって戦略的な勝利だと言えるだろう。これは完全な勝利ではないが大きな成果であり、今後のさらなる勝利の可能性を残している」

ロシアによるウクライナへの本格侵攻からほぼ2年。厳しい状況にもかかわらず、米バイデン政権がウクライナとの関係を断ち切る気配はない。「バイデン政権は、ある種のジレンマに直面している」とハースは言う。「バイデン政権には、私が指摘したことに共感はしても、バイデン政権とウクライナ政府との間に意見の食い違いがあるように見えるのは望まない人もいる」

 

同盟国と政策目標が一致しないというのはいつも気まずいものだが、より幅広い地政学的な動向は、必ずしもウクライナにとって有利なものではないとハースは警告した。「我々、そしてウクライナが有利な立場にあるうちに、今後についての決定を下すべきだ」

カプチャンは言う。米政府関係者は「ゼレンスキーにはまだ戦争を終わらせる準備ができていないと見ている。ウクライナ側にその気がないならば、西側諸国がそれを押しつけることはできない」。

ウクライナ侵攻は西側のツケ

「おそらく水面下では、この戦争をどう終わらせるのかという議論も議論が行われているだろう」と、カプチャンは言う。「だがウクライナ自身がそれを議論する準備ができるまでは表面化することはないだろう」

「だがウクライナもいずれは、西側から供与される資源を、いまウクライナの統治下にある82%の領土の防衛と復興に投じた方が賢明だと考える時がやって来るだろう」

西側諸国がたとえ短期的にでも降伏に等しい方針への転換を促した場合、ウクライナはそれを快く思わないだろう。ウクライナは2014年以降、ロシアと親ロシアの分離主義勢力との戦いで何万人もの犠牲者を出し、今回の戦争では2年近くの間に10万人以上の犠牲者を出したと考えられている。

ウクライナ国民は、西側諸国が2014年にプーチンの責任を追及し損ねたことや、ウクライナがソ連崩壊後の1997年に国内に残った核兵器を放棄(ブダベスト覚書)した後も安全保障を提供し損ねた「集団的な失敗」のツケを払わされている。プーチンがまたまんまと侵略の代償を支払わずに逃げおおせるなど、ウクライナ人にとっては耐え難いことだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中