最新記事
中東

【一覧】イスラエルに対抗するのはハマスだけではない...知っておくべき、これだけ多くの政治・武装組織

It’s Not Only Hamas

2023年11月21日(火)13時20分
アレクサンドラ・シャープ、リシ・アイエンガー(いずれもフォーリン・ポリシー誌記者)
PLOの主流派ファタハを支持するガザの人々。追放されても支持は根強い(2016年) ALI JADALLAHーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

PLOの主流派ファタハを支持するガザの人々。追放されても支持は根強い(2016年) ALI JADALLAHーANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES

<入り組んだ歴史の中でこれだけ多くの反イスラエル組織が生まれた>

イスラム組織ハマスの奇襲に対してイスラエルが報復攻撃を強化し、中東は大混乱に陥っている。攻撃は、世界で最も長く続いている紛争の1つを劇的にエスカレートさせた。

しかし、パレスチナ人の民族自決権のためにイスラエルと戦おうという組織は、ハマスだけではない。危機の時だからこそ押さえておきたい反イスラエルの主要組織は──。

◇ ◇ ◇


ハマス

200万人以上が暮らすパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するスンニ派イスラム系政治組織。イスラエルを承認せず、軍事部門のエゼディン・アル・カッサム旅団などが武力抵抗を続け、長年にわたりイスラエルに対する数多くのテロ攻撃やミサイル攻撃を主導してきた。

1987年の第1次インティファーダ(パレスチナ人の反イスラエル闘争)を機に結成され、アラビア語の「イスラム抵抗運動」の頭文字を取ってハマスと名付けられた。母体となったのは、エジプトのスンニ派イスラム組織「ムスリム同胞団」だ。

ハマスは武装組織であると同時に、パレスチナの2大政党の1つでもある。ライバル政党であるファタハは、イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸地区を統治するパレスチナ自治政府の主流派。だがハマスは2006年のパレスチナ立法評議会選挙で圧勝すると、ファタハをガザ地区から追放し、07年にガザを全面掌握した。多くの西側諸国は、ハマスあるいはその軍事部門をテロ組織に指定している。

カタールもハマスとは関係が深い。ハマスの指導者イスマイル・ハニヤは、カタールの首都ドーハから指揮を執っている。レバノンのシーア派イスラム系武装組織ヒズボラとは、宗教やイデオロギー面で意見の対立はあるものの、イスラエルとの戦いにおいては長年の同盟関係にある。

ファタハ

組織の名称は「パレスチナ民族解放運動」を意味するアラビア語の頭文字を逆からつづった。パレスチナ最大の世俗派政党であり、PLO(パレスチナ解放機構)およびパレスチナ自治政府の主流派だ。

設立は、48年の第1次中東戦争とイスラエルの建国によって75万人以上のパレスチナ人が住む場所を追われた「ナクバ(大厄災)」から約10年後の59年。PLOのヤセル・アラファト元議長やマフムード・アッバス現議長など、パレスチナから外国に離散した活動家が中心となって結成された。

ハマスと異なりイスラエルを承認しており、67年の第3次中東戦争後に設定された境界線を国境とする「2国家解決」を望んでいる。ガザ、ヨルダン川西岸と東エルサレムを「パレスチナ」と定義する案だ。

パレスチナ立法評議会選でハマスが予想外の勝利を収めた翌年の07年、ファタハはハマスによってガザを追われ、現在はヨルダン川西岸のみを支配している。

税制
日本のモデルは「合理的」。安定財源として期待される「たばこ税」はどうあるべきか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ルーマニア大統領選、親ロ極右候補躍進でT

ビジネス

戒厳令騒動で「コリアディスカウント」一段と、韓国投

ビジネス

JAM、25年春闘で過去最大のベア要求へ 月額1万

ワールド

ウクライナ終戦へ領土割譲やNATO加盟断念、トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 5
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 7
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 8
    健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はあります…
  • 9
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 10
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中