パレスチナに肩入れする国際世論に多くのイスラエル人が開き直っている...ガザ包囲「4段階作戦」の出口は
No End in Sight
さらにバイデンは、ガザへの援助物資の輸送ルートや、人質を脱出させるルートの確保も強く求めた。アメリカ大統領の直々の圧力を受け、イスラエルはガザへの水と電力の供給、そしてインターネット接続を一部再開。エジプトから食料や医薬品などの援助物資が入るルートも確保した。
200万人を超えるガザ住民(その多くは現在避難民となっている)のニーズを満たすには、とても十分とは言えない。だがバイデンの圧力は、全面的なガザ侵攻を遅らせるとともに、ネタニヤフ政権の一部に、報復に飛び付く前に何を達成したいのかよく考えるよう促した可能性はある。
イランも戦争に消極的
バイデンとアントニー・ブリンケン米国務長官、ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、戦争を拡大させないために、そして人質を解放させるために、中東諸国政府と毎日のように話し合いを続けてきた。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを通じてハマスを支援しているとささやかれるイランは、イスラエルともアメリカとも戦争はしたくないが、ガザ空爆が続くようなら対抗策を講じないわけにはいかないかもしれないと、米政府関係者に伝えてきた。
ハマスは今も、イスラエルに向けてロケット弾を発射し続けており、ヒズボラもレバノン南部からイスラエルに、そしてイスラエルは両者に向けてロケット弾を発射している。ただ、ヒズボラはハマスの行動に支持を示しつつ、今回の衝突に引きずり込まれないよう慎重に振る舞っている。
だが、一歩間違えると紛争が急速にエスカレートする恐れは十分ある。歴史上、誤解が重なって、小さな衝突が大戦争に発展した例は数多い。
そんななか存在感を示しているのがカタールだ。長年、ハマスに物資を供給してきたが、アメリカに「NATO以外の重要な同盟国」と信頼され、今回も人質解放の重要な仲介役を果たしている。
ハマスは、イスラエルが拘束しているパレスチナ人約1万人(その約半数は10月7日以降に拘束された)を全員解放するなら、人質を全員解放してもいいと明言した。
この規模の「人質交換」に前例がないわけではない。イスラエルは11年、その5年前にハマスに誘拐されたイスラエル軍の兵士ギルアド・シャリットを解放させるために、パレスチナ人の囚人1000人の解放に応じた。