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イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング

An Unwinnable War

2023年11月7日(火)20時55分
ポール・ロジャーズ(英ブラッドフォード大学教授〔平和学〕)
イスラエル軍事行動の末路

1982年、イスラエルはレバノンに侵攻したが、最終的に完全撤退を迫られた MICHEL PHILIPPOTーSYGMA/GETTY IMAGES

<イスラエル軍がとった過去の軍事行動のパターンから見えてくるネタニヤフ首相の戦略的誤算がもたらす地上侵攻の末路とは?>

過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。

1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。

06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた。

そして今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。

14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。

このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた。

今後を占うには歴史が参考になる。9.11同時多発テロの後で、アメリカは国際社会の強い支持を得た。アフガニスタンに侵攻すれば泥沼に陥ると警告する専門家もいたが、タリバンとの戦いは避けられないと国際社会は見なした。

だが、アメリカを含む連合軍はその20年後、混乱の中でアフガンから撤退した。

国連での孤立が鮮明に

地上戦の拡大に関して、イスラエルでは懸念の声が上がっている。軍部でもベンヤミン・ネタニヤフ政権内でも国民の間でも、今後の動向については意見が分かれる。

ロシア軍に包囲された東部マリウポリでウクライナ軍がアゾフスターリ製鉄所に籠城し、全長24キロの地下トンネルを駆使して3カ月近く持ちこたえたのはつい昨年のこと。ガザのトンネル網ははるかに広大で、ハマスが数カ月の戦闘に備えているのは確実だ。

10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。

ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。

一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。

ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。

変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。

10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた。

過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。

だがそうはならず、今後そうなる見込みもない。

The Conversation

Paul Rogers, Professor of Peace Studies,University of Bradford

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

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