イスラエルとハマスによるガザ人質解放合意 米当局者が明かした緊迫の交渉の舞台裏
10月24日:イスラエルのガザ地上侵攻が秒読み
イスラエルが今にもガザ地上侵攻を開始しそうな10月24日、米政府に、ハマスが女性と子どもを解放するにあたっての条件に同意したという情報が入った。
米政府高官はイスラエル側と地上侵攻を延期すべきかどうか議論した。イスラエル側は、人質が生きているという証拠がないため侵攻延期に見合わないとはねつけた。ハマスは、戦闘が休止するまで拘束者を特定できないと主張した。
バイデン氏の集中協議
バイデン氏はその後3週間にわたり、具体的な協議を行った。その間、人質解放に向けた提案が交錯、ハマスに人質のリストとその身元情報、解放の保証を要求し、ワシントン、ドーハ、カイロ、ガザと連絡を取り合うという時間も手間もかかる作業が続いた。
やがて人質の段階的解放という構想が浮上し、バイデン氏はカタール首相と電話会談した。
構想は、第一段階としてハマスが女性と子どもの人質を解放し、それに応じる形でイスラエルが拘束しているパレスチナ人を解放するという内容だった。
しかしイスラエルは第一段階で女性と子ども全員の解放を要求。米国も同調し、カタールを通じて、ハマスに拘束している女性・子どもの生存証明や身元確認情報を要求した。
ハマスは第一段階で50人の解放は保証したが、身元情報のリスト作成は拒否した。
11月9日:合意案の検証
11月9日、バーンズCIA長官は合意案に目を通すためドーハでカタール首脳やモサドのバルネア長官と会った。その時点での大きな障害は、ハマスが誰を拘束するのか明確にしていないことだった。
その3日後、バイデン氏はカタールのタミム首長に電話し、50人の人質の名前、年齢、性別、国籍などの明確な身元情報を要求した。その後まもなく、ハマスは第一段階で解放する50人の人質の詳細情報を明らかにした。
11月14日:バイデン氏、ネタニヤフ氏に合意受け入れ促す
11月14日、バイデン氏はネタニヤフ首相に電話で合意を受け入れるよう促し、ネタニヤフ氏は同意した。その日、イスラエルにいたマガーク氏はネタニヤフ氏に腕をつかまれ「われわれにほこの合意が必要だ」と言われた。
しかし、ガザで通信が遮断され、交渉が止まった。
これが最後のチャンスだ
通信が回復した時、バイデン氏はサンフランシスコでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席していた。バイデン氏は、カタール首長に電話をし、これが最後のチャンスだと言った。カタール首長は合意達成に向け圧力を掛けると約束した。
11月18日:最後の詰め
マガーク氏はドーハでカタール首相に面会した。バーンズCIA長官もモサドと協議後にオンラインで参加した。会合で合意案の残っている対立点を特定した。
こうして合意案は、第一段階で女性と子どもを解放するとしたうえで、全員の解放をにらみ、さらなる解放の見通しも盛り込む形で出来上がった。
翌朝、マガーク氏はカイロでエジプト情報当局のカミル長官と面会。ガザからはハマス幹部が前日ドーハで策定された合意事項のほぼ全てを受け入れたとの報が入った。
その後、さらに交渉が重ねられ、22日の合意に至った。
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