アメリカがウクライナを見捨てる日...米大統領選が戦争の結果に影響か?
THE WAR OVER THE UKRAINE WAR
ウクライナが戦闘で決定的勝利を挙げ、ロシアに有利な長期の消耗戦に引きずり込まれる事態を回避するには、追加の軍事支援に踏み出してくれる相手が必要だ──ウクライナ内務省顧問のアントン・ゲラシュチェンコは、そう本誌に語った。
「時間が私たちの敵になりつつある。ロシアの人口はウクライナの3.5倍だ。私たちには、いつまでも戦い続けるだけの人員がいない」
死傷率がより高くても、ロシアはウクライナに比べて容易に持ちこたえられるし、プーチンが出口を探している兆候はまだない。ロシア専門家で米海軍大学院助教のアレクサンダル・マトフスキは、個人的見解だと断った上でそう指摘する。「ロシアとロシア国民にどれほど打撃を与えようと、プーチンは物理的限界まで粘る道を選ぶかもしれない」
さらにロシアの兵力は比較的高齢で、多くの場合は経済・社会的に恵まれない層からの動員兵だと、ゲラシュチェンコは語る。一方、ウクライナでは文化的エリート層や高学歴の中間層の多くが志願兵になり、空洞化が進んでいる。これはウクライナにとって過酷なツケだという。
「私たちには、はるかに大規模な物量の武器が必要だ。それも、最も熟練した兵士の少なくとも一部がまだ戦場にいる間に。これから10年間、あるいはそれ以上にわたって援助を求め続けずに済むために、即時の支援増大を必要としている」
侵攻当初から、ウクライナの運命はウクライナが決めるべきだと、バイデン政権は主張してきた。こうした姿勢が大統領選で勝利をもたらすと、民主党関係者は確信している。彼らが指摘するように、現職大統領としての職務能力への支持率は低いものの、世論調査ではバイデンとトランプは互角。加えて、米国民の大半が、アメリカはウクライナへの支援を継続すべきだと(少なくとも今のところは)考えている。
高齢バイデンの意外な強み
有権者はウクライナ問題や外交政策を「人格検査」と位置付けるはずであり、トランプ相手の戦いならそれがバイデンに幸いするのではないか。そうみるのは、20年大統領選でバイデン陣営に参加した民主党の世論調査担当者セリンダ・レイクだ。
「安定したリーダーシップと、混乱したリーダーシップの違いがはっきり表れる」と、レイクは本誌に語った。「(ウクライナでの戦争は、80代に入ったバイデンが)力を示し、年齢を長所にする機会にもなっている。外交政策は、明らかに年齢が経験と同義の分野だから」