イスラエル奇襲攻撃の黒幕、ハマスのデイフ司令官とは何者か?
2つの頭脳、1人の首謀者
ハマスに近い関係者は、攻撃計画の決定はハマスのアルカッサム旅団を指揮するデイフ氏とガザ地区のハマス指導者であるヤヒヤ・シンワル氏の共同によるものだが、どちらが首謀者であるかは明らかだと話している。
この関係者は「頭脳は2つあるが、首謀者は1人だ」と語り、作戦に関する情報を知っていたのはハマス幹部の中でも一握りにすぎなった、と続けた。
ハマスの考え方に詳しい中東地域の情報提供者は、今回の攻撃については秘密が厳守されており、イスラエルの宿敵であり、ハマスにとっては資金や訓練、武器の重要な提供者であるイランでさえ、ハマスが大規模な作戦を計画していることを漠然と知っていただけで、決行日時や詳細については把握していなかったとしている。
この関係者によれば、イラン政府は大規模な作戦が用意されていることに気づいていたが、ハマスとパレスチナ指導部、イラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラ、そしてイランとの間で協議されたことはなかった。
「極秘裏に進められていた」と、この関係者は語る。
イランの最高指導者ハメネイ師は10日、イラン政府はイスラエルへの攻撃に関与していないと述べた。米国政府は、イランとハマスは共謀関係にあるが、今回の攻撃にイランが直接関与したことを示す機密情報や証拠は得ていない、としている。
デイフ氏が練り上げた計画は、長期にわたる隠蔽工作を伴うものだった。宿敵イランの同盟者であるハマスは武力衝突には関心がなく、実効支配しているガザにおける経済発展に注力している──。イスラエルはそう信じ込まされてしまった。
ところが、ハマスに近い関係者によれば、イスラエルがガザ地区の労働者に経済的インセンティブを与え始める一方で、ハマスの戦闘員は、多くの場合はイスラエル軍の目にも明らかな形で訓練を続けていたという。
ハマス幹部のアリ・バラカ氏は、「私たちはこの戦いに向けて2年間準備してきた」と語った。
デイフ氏は録音の中で、落ち着いた声で、ハマスはイスラエルに対し、パレスチナ人に対する犯罪をやめ、虐待や拷問を受けている捕虜を解放し、パレスチナ人の土地の収用を停止するよう繰り返し警告してきた、と語った。
「占領部隊は毎日のようにヨルダン川西岸の私たちの村や町、都市を襲撃し、殺し、傷つけ、破壊し、拘束している。私たちの土地を何千エーカーも没収し、我が国民を家から追い出して入植地を建設する一方で、ガザに対する犯罪的な包囲を続けている」