最新記事
中東

イスラエルの風光明媚な農場キブツが地獄に...... ハマスの襲撃受けた集落の惨状

2023年10月11日(水)21時08分
ロイター
全焼した家の外に放置された壊れたベビーベッド

路上のあちこちに遺体が横たわり、バスケットボールコートの外には遺体の収容袋が並べられ、破壊されたベビーベッドが全焼した家の外に放置されている。Reuters Japan / YouTube

破壊されたベビーベッドが全焼した家の外に放置されている。路上のあちこちに遺体が横たわり、バスケットボールコートの外には遺体の収容袋が並べられている。至る所から死のにおいが放たれている。

ほんの数日前まで、この場所は風光明媚で静かなイスラエル北西部のキブツ(農業共同体)だった。クファル・アザは750人ほどが暮らすコミュニティーで、住民の多くは幼い子どもを育てる家族だ。だが7日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが攻撃し、住宅は焼け、村は破壊された。

「母親、父親、赤ちゃん、若い家族がベッドの上や防護室、ダイニングルーム、庭で殺された」とイスラエル軍に長年所属するイタイ・ベルブ少将が10日、話した。自宅で殺害された住民の遺体を一軒一軒回収するベルブ氏は、明らかに動揺していた。

「戦争でも、戦場でもない。これは大虐殺だ」とベルブ氏。中には首をはねられていた犠牲者もいたという。

「軍に40年間所属してきたが、これまでこんな状況は見たことがない」

ガザ地区からわずか3キロの場所にあるクファル・アザは、ハマスのイスラエル南部に対する攻撃で最も大きな被害を受けた地域の一つだ。イスラエル当局は、ハマスによる攻撃で少なくとも1000人が死亡し、その多くは自宅や路上、ダンスフェスティバルで銃殺された一般市民だとしている。

パレスチナ当局は、イスラエルによる報復攻撃で少なくとも830人のガザ住民が命を落とし、複数の地区が完全に破壊されたと発表した。

クファル・アザへの攻撃から生き延びたアビドル・シュワルツマンさん(38)は、イスラエル兵に助け出されるまでの間、妻と1歳の娘と共に自宅の防護室に20時間以上隠れていたという。救出後に見た光景は「真の地獄」だったと明かす。

「至る場所に遺体があった。ありとあらゆる場所に遺体が横たわっていた」とシュワルツマンさんは言う。

「私たちの小さな楽園や天国が、全て焼かれてしまうのを目の当たりにした。燃やされ、血まみれになってしまった」

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中