大谷翔平の活躍は効果大? MLB観客動員数が大幅増加...その本当の理由
大谷翔平 Eric Hartline-USA TODAY Sports
<まるで漫画のような結末で決めた世界一。圧倒的なパフォーマンスの大谷にアメリカも感動している>
風が、湿った雪を部屋の窓にたたき付ける。外は暗い。ボストン近郊のわが家で、私はソファに身を沈めていた。春はまだ来ない。と、次の瞬間、夜空が割れて光を放った。私は思った。見よ、やはりヒーローはいるのだ。この世の中、まだまだ捨てたものじゃないぞ。
「オー・マイ・ゴッド!」私は闇に向かって叫んだ。びっくりした妻が隣の部屋から首を出したが、すぐに事態を理解した。
あれは2023年3月21日の晩、私はテレビで大谷翔平がマイク・トラウトを空振り三振に仕留め、日本に3-2の勝利を、そしてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の優勝杯をもたらす歓喜の瞬間を見届けた。
それはあまりにも劇的で、小学生の「ごっこ遊び」か漫画の世界でしかあり得ない展開だった。しかし大谷もトラウトも真剣だった。大谷は野球発祥の国アメリカで、アメリカの代表をねじ伏せた。WBCも成長した。今はどこの国の、誰がヒーローになってもおかしくない。
WBCでの大谷のパフォーマンスは圧巻だった。大会を通じて最速の打球を放ち(時速191キロ、対チェコ戦での二塁打)、最速の球を投げ(時速164キロ、対イタリア戦)、最も遠くまで球を飛ばした(飛距離137メートル、対オーストラリア戦のホームラン)。通算打率は.435、出塁率は.606、長打率は.739(二塁打4本とホームラン1本)。投手としては9回と2/3を投げ、11奪三振で防御率は1.86。当然、大会のMVPに選ばれた。
決勝の前に生まれた名言
そのリーダーとしての気質も日本の勝利に貢献した。アメリカとの決勝戦を前に、チームメイトに「(アメリカの選手に)憧れるのをやめよう」と語りかけたことは有名だ。「憧れてしまったら彼らを超えることはできない。僕らは今日、トップになるためにここに来た。今日一日だけは勝つことだけを考えよう」
そして彼は目標を達成した。試合後、大谷は「間違いなくこれが今までの人生で最高の瞬間」だと述べ、さらにこう続けた。「これで日本の野球が、世界のどこのチームにでも勝てることを証明できた」
アメリカでは、しばらく前から野球人気が低下傾向にあった。なにしろ野球の試合は「時間がかかりすぎる」からだ。かつて野球は、いろいろな国からアメリカにやって来た移民にとって社会に溶け込むため、そして金持ちになるための出世ルートだったが、今は違う。今の民族的少数派、とりわけアフリカ系アメリカ人は野球よりもフットボールやバスケットボールを選んでいる。