中国人観光客、処理水放出に対する政府の反日プロパガンダを裏切る
China's Fukushima warnings fail to stop tourists flocking to Japan
国慶節の休暇で電車待ちをする中国人(9月28日、上海虹橋駅) REUTERS/Aly Song
<国慶節にともなう大型連休は日本行きの航空便が既に予約でいっぱいだったとの報道>
中国政府は東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を受けて、日本産の海産物は危険だと盛んに警告を鳴らしたが、それにもかかわらず大勢の中国人観光客が日本を訪れていると日本メディアはこれ見よがしに報道している──中国の共産党機関紙・人民日報系のタブロイド紙「環球時報」は日本のメディアに怒りをぶちまけた。
中国では10月1日の国慶節(建国記念日)に伴い、9月30日から「黄金週」として知られる8連休が始まった。日本の航空各社は、中国の各都市から日本に乗り入れる航空便はいずれも予約でいっぱいだったと述べている。
「日本の報道もプロパガンダ」
環球時報は、福島第一原発の処理水が海水放出されることで日本を訪れる観光客数は大幅に減少すると予測していたが、中国人観光客がその予測を行動で否定した。
日本政府が8月24日から処理水の海洋放出を開始すると、中国政府は日本産水産物を全面的に禁輸する措置を取った(中国漁船はその後も同じ海域で漁を続けているが)。ほかにも、国連の高官レベルの会合で抗議をするなど、国を挙げて反日プロパガンダを展開してきたが、国民に大型連休中の日本旅行を断念させることはできなかったようだ。
共同通信は、日本の高橋一郎観光庁長官が9月27日の定例会見で、旅行各社への聞き取りの結果、処理水放出が日本の観光業に及ぼす影響は「現時点では限定的なもの」だと述べたと報道。中国人観光客にとって、日本は今も一番人気の旅行先だと伝えた。
「大勢の中国人が中国政府の政治的心情を共有している」と主張する国営メディアにとって、国民が海外旅行の行き先にどこを選ぶかは厄介な問題だ。環球時報は論説記事の中で日本の報道について、中国の立場を弱体化させることを狙った「観光事業に関する世論戦」だと批判。日本行きの航空便に登場した全ての乗客が観光客だった訳ではないと主張した。