最新記事
中国人観光客

中国人観光客、処理水放出に対する政府の反日プロパガンダを裏切る

China's Fukushima warnings fail to stop tourists flocking to Japan

2023年10月5日(木)18時17分
ミカ・マッカートニー

国慶節の休暇で電車待ちをする中国人(9月28日、上海虹橋駅) REUTERS/Aly Song

<国慶節にともなう大型連休は日本行きの航空便が既に予約でいっぱいだったとの報道>

【動画】空から垂直に堕ちた中国旅客機

中国政府は東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を受けて、日本産の海産物は危険だと盛んに警告を鳴らしたが、それにもかかわらず大勢の中国人観光客が日本を訪れていると日本メディアはこれ見よがしに報道している──中国の共産党機関紙・人民日報系のタブロイド紙「環球時報」は日本のメディアに怒りをぶちまけた。

中国では10月1日の国慶節(建国記念日)に伴い、9月30日から「黄金週」として知られる8連休が始まった。日本の航空各社は、中国の各都市から日本に乗り入れる航空便はいずれも予約でいっぱいだったと述べている。

「日本の報道もプロパガンダ」

環球時報は、福島第一原発の処理水が海水放出されることで日本を訪れる観光客数は大幅に減少すると予測していたが、中国人観光客がその予測を行動で否定した。

日本政府が8月24日から処理水の海洋放出を開始すると、中国政府は日本産水産物を全面的に禁輸する措置を取った(中国漁船はその後も同じ海域で漁を続けているが)。ほかにも、国連の高官レベルの会合で抗議をするなど、国を挙げて反日プロパガンダを展開してきたが、国民に大型連休中の日本旅行を断念させることはできなかったようだ。


共同通信は、日本の高橋一郎観光庁長官が9月27日の定例会見で、旅行各社への聞き取りの結果、処理水放出が日本の観光業に及ぼす影響は「現時点では限定的なもの」だと述べたと報道。中国人観光客にとって、日本は今も一番人気の旅行先だと伝えた。

「大勢の中国人が中国政府の政治的心情を共有している」と主張する国営メディアにとって、国民が海外旅行の行き先にどこを選ぶかは厄介な問題だ。環球時報は論説記事の中で日本の報道について、中国の立場を弱体化させることを狙った「観光事業に関する世論戦」だと批判。日本行きの航空便に登場した全ての乗客が観光客だった訳ではないと主張した。

 

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中