「膠着状態」に入ったウクライナ戦争の不都合な真実...西側の支援はそろそろ限界か?
HOW PEACE TALKS CAN BEGIN
欧州諸国は侵攻当初、ロシアをウクライナで食い止めなければ自分たちが危ないとの危機意識から何を置いてもウクライナを全面的に支援してきた。だが、ここにきてロシアの「野望」が無限ではなかったことに気付き、物事のバランスを改めて考え始めたのだろう。
こうしたウクライナ支援の空気の落ち込みを受けてか、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、英誌エコノミストのインタビューにおいて、ウクライナ支援が減少すれば、ウクライナ避難民たちがどのような反応を示すか分からない、と述べたようだ。その真意は不明だが、大量のウクライナ難民を受け入れている欧州諸国にとっては、一種の脅迫にも聞こえたことだろう。
ブリンケン発言のニュアンス
9月にインドで行われたG20首脳会議にウクライナは招待されなかったが、アントニー・ブリンケン米国務長官と日本の林芳正外相(当時)がG20と並行してウクライナを訪問し、支援の姿勢を示したのは記憶に新しい。ブリンケンは新たに10億ドル規模の支援を約束したが、ウクライナ訪問後の9月10日の記者会見で、ゼレンスキーはロシアと交渉するだろうかとの質問を受け、「プーチンはウクライナを地図から消し去るという目的に失敗したことを忘れてはならない」と述べつつ、「交渉には相手が必要だ」と応じた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「目的に失敗した」というところは、前述のラダキンと同じ認識を示しており、「既にロシアは敗北している」というのが、西側が協調してアピールしたいナラティブなのだろう。その裏には、ウクライナは既に「勝利」しており、交渉してもいいのではないか、との言外のニュアンスが感じられる。
というのも、ブリンケンはさらに、「プーチンが交渉に関心を示せば、ウクライナ側は率先して応じると思う」と述べているのだ。その後に続けて「戦争終結はウクライナの主権と領土一体性を反映した条件で」としているが、これは定型文であって、重点は前者の交渉に関するくだりにあるのは明らかだ。