最新記事
ウクライナ情勢

「クリミア決戦」への備え? ロシア軍がクリミア半島東部に新しく建設した「竜の歯」を映像で確認

'Dragon's Teeth' in Eastern Crimea Betray Russia's Fear of Losing Peninsula

2023年10月4日(水)16時46分
エリー・クック

ロシア軍はクリミア半島頭部のフェオドシャ近郊に「竜の歯」を築いた。写真は3月12日、クリミア半島黒海側の衛星画像

<クリミアでウクライナ軍を迎え撃つ事態が迫っているとロシア軍が考えた証拠が見つかった>

【動画】ロシアの「竜の歯」をウクライナ軍のチャレンジャー2戦車があっさり突破する様子

ロシア軍が、クリミア半島東部で新たに対戦車防衛線を構築したことが、映像から判明した。ウクライナ南部の戦闘の最前線からはかなり離れているが、もしウクライナ軍がクリミア半島を制圧する事態になった場合には脅かされかねないロシア本土国境に近い場所だ。

ウクライナ人と、クリミア半島に起源を持つ先住民族クリミア・タタール人からなる軍事パルチザン運動「アテシュ」が10月4日に公開した映像には、港湾都市フェオドシヤ付近に「竜の歯」の呼称でしられる防衛ラインとみられるものが映っている。この町は、ロシアが一方的に併合したクリミア半島の東端に位置しており、クリミア半島をロシア本土を結ぶケルチ海峡の南西方向にある。

ロシア政府は、2014年からクリミア半島を実効支配しており、2022年2月に始まった本格的な侵攻の期間を通じて、ウクライナ攻撃の足がかりとしてこの半島を使ってきた。これに対してウクライナ政府は、クリミア半島を必ず奪還すると繰り返し表明している。

現在ウクライナ軍は、やはりロシアに併合されたザポリージャとヘルソンの2州を徐々に攻略しながら南に進軍しているが、その最終目標もクリミア半島だ。

退却も想定?

「竜の歯」とは、戦車の前進を阻み、機械化歩兵の領地獲得を防ぐことを目的とした、鉄筋コンクリート製の障害物だ。とくに新しいものではなく、適当な道具さえあれば撤去はそれほど難しくない。だが、ウクライナ軍の南進のスピードを遅らせ、ウクライナ軍を一点に集中させる効果はある。

ロシア軍の動向を追うアナリスト、イアン・マトヴェイエフは2023年4月、ワシントン・ポストにこう語っている。「ロシア軍はどうやら、近い将来にクリミア半島を防衛する必要が生じることを理解しているようだ」

オランダにあるハーグ戦略研究センター所属の戦略アナリスト、フレデリック・メルテンスによると、フェオドシヤ北東部にある「竜の歯」は、町から約16キロ離れたケルチ半島の最も狭い部分に設置されているという。

もし本当にウクライナがクリミアに進軍して勢力下に収めた場合、ここは、ウクライナ軍によるケルチ半島全体への侵攻を阻止するのに適した場所だ、とメルテンスは本誌に語った。

「北部から撤退するロシア軍にとっては、理にかなった退却ポジションだろう」とメルテンスは付け加えた。「ここなら、攻撃を食い止めて、力を蓄えることもできる」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ボルボ、北米市場の見通し下方修正 トランプ関税で不

ワールド

石破首相、EUとの連携強調 「自由貿易の観点で」

ビジネス

日経平均は反発、一時3万5000円回復 世界景気巡

ワールド

ウクライナ各地に無人機攻撃、9人死亡 民間インフラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 4
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 8
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 9
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中