最新記事
中国政治

中国・秦剛前外相の失脚は本当に女性関係のせいだったのか?

Did a Sex Scandal Derail China's Foreign Minister?

2023年10月3日(火)17時55分
アーディル・ブラー

もう一人、習の登用で国防相に就任しながらわずか2カ月で動静が途絶えている李尚福・国防相はどうか。ロイター通信は9月、彼が汚職の疑いで調査を受けていると報じた。李も秦も、閣僚とおおよそ同等の「国務委員」の肩書を維持している。

中国政府からの説明がないなか、秦の更迭は彼がアメリカにいた時期のスパイ活動に関連があるのではないかという憶測も残っている。秦は2021〜2023年までの17カ月、駐米中国大使を務めていた。専門家の間では、このスパイ説について意見が割れている。

「アメリカ側のスパイになることは反逆行為であり、もしも習が秦の反逆を疑っていれば、迅速に厳罰に処していたはずだ。そうなっていないということは、スパイ説が更迭の理由ではあり得ない」とツァンは指摘する。

一方、米シンクタンク「戦略国際問題研究所」のジェームズ・ルイス上級研究員は、逆に不倫のほうが解任理由ではありえないと、本誌に次のように語った。「中国共産党が浮気や不倫を理由に幹部を更迭し始めたら、それこそ誰もいなくなってしまう。あり得るとしたら、汚職、スパイ行為、あるいは習に対する忠誠心の欠如などのどれかである可能性が高い」

代理母によって生まれた子ども(報道によると米国籍)もまた、国家安全保障に関係がある問題として、習が秦を処分せざるを得ない理由になった可能性があるとルイスは指摘した。

「不倫相手」をめぐる疑惑

報道によれば、秦と傅が初めて出会ったのは2010年頃。秦は当時駐英公使で、傅は英ケンブリッジ大学で学位を取得後、フェニックステレビのロンドン支局で働き始めたところだった。

ケンブリッジ大学は傅からかなりの額の寄付を受け、彼女が学んだチャーチル・カレッジにある庭に傅の名前を付けた。傅がどこから多額の寄付金を調達したのかは、いまだに不明だ。彼女は4月には、ロサンゼルスから北京に向かうのにプライベートジェットを利用したと報じられている。傅はその翌月以降、中国のメッセージアプリ「微信」への投稿を行っていない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、農務長官にロフラー氏起用の見通し 陣営

ワールド

ロシア新型中距離弾、実戦下での試験継続 即時使用可

ワールド

司法長官指名辞退の米ゲーツ元議員、来年の議会復帰な

ワールド

ウクライナ、防空体制整備へ ロシア新型中距離弾で新
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中