最新記事
アメリカ社会

<調査>「国を救うための暴力」なら支持するアメリカ人が4人に一人へ急増

White Evangelicals More Open to Political Violence Than Non-Christians

2023年10月30日(月)18時34分
アイラ・スリスコ

共和党候補のトップを独走するトランプ(10月28日、ラスベガスの選挙集会で) REUTERS/Steve Marcus

<暴力を支持する最大の勢力は、2020年の米大統領選が「盗まれた」と信じている人々。危険な兆候だ>

【動画】「まさに壊滅的!」米ミサイルATACMSから飛散したクラスター弾による爆撃の瞬間

アメリカ国民の20~25%を占めるというキリスト教プロテスタントの福音派は、政治的にも大きな影響力をもっている。妊娠中絶や同性婚に反対し、進化論を信じないことなどでも知られる。この宗派に属する白人は、キリスト教徒以外の人々よりも政治的暴力を支持する傾向が強いことが、公共宗教研究所(PRRI)の最新の調査で明らかになった。

 
 
 
 

ドナルド・トランプ前大統領の支持者が2020年大統領選の結果を覆すために連邦議会議事堂を襲撃した2021年1月6日の事件以来、政治的暴力に対する懸念が高まっている。

福音派の白人というグループ全体に1月6日の襲撃の責任があるわけではないが、トランプの最も忠実な支持者が多い。

PRRIは10月25日に世論調査を発表し、その一部に「憂慮すべき」結果が含まれていると述べている。「ものごとが間違った方向に行き過ぎた場合、真のアメリカの愛国者は、国を救うために暴力に訴えなければならないかもしれない」という意見にアメリカ人のほぼ4分の1が賛成したという。

今回の調査によると、賛成した回答者は2021年には15%だったが、2023年には23%にまで上昇した。

白人の福音派の場合、31%がこの意見を支持し、非キリスト教徒や無宗教のアメリカ人を大きく上回った。調査対象となった他のキリスト教信者のグループでは、政治的暴力を支持する割合が福音派よりかなり低く、非キリスト教徒より低いグループもあった。

キリスト教徒以外でも増加

暴力を肯定する意見を支持したのは、福音派以外の白人プロテスタントで25%、黒人プロテスタントでは24%だった。また、ヒスパニック系カトリック信者では21%、白人カトリック信者では20%だった。

政治的暴力を支持する意見はすべてのグループで増加したが、最も増加したのはキリスト教以外の宗教の信者で、21年には9%だったが、今回は23%に急上昇した。福音派の白人では、24%から31%へと、増加の幅はそれほど大きくはなかった。

だが回答者が政治的暴力を肯定するかどうかを決定する最大の要因は、宗教ではなかったようだ。所属政党、特にトランプと彼の「盗まれた」2020年大統領選挙という偽りの主張を支持するかどうかが、はるかに大きな影響を与えているようにみえる。

暴力を行使して「国を救う」ことを支持する主要政治グループとしては共和党が33%と最も多かった。民主党員の場合、賛成は13%ので、無党派層は22%で差が開いた。トランプを支持する共和党員は、支持しない共和党員の2倍以上であり、41%対16%の大差がついている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中