最新記事
注目ニュースを動画で解説

中国vsインド、グローバルサウス「新リーダー」をめぐる争いの行方【注目ニュースをアニメで解説】

2023年9月29日(金)12時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
中国vsインド

Newsweek Japan-YouTube

<グローバルサウスのリーダーシップの座をめぐる争いについて解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>

カネと威嚇で途上国を取り込んできた習近平の計画に暗雲が漂う一方、西側はインドをグローバルサウスの新リーダーとして受け入れる準備をしている。中国の「共産主義+帝国主義+拡張主義」はもう限界か──。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「中国vsインド、グローバルサウス「新リーダー」をめぐる争いの行方は?【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

 
◇ ◇ ◇

中国は1960年代の初め以降、西側に対抗する途上国の擁護者を自称してきた。

毛沢東の掲げた「農村から都市を包囲する」戦略は、1930年代の内戦で国民党政権を倒した勝利の方程式でもある。新しい方程式では、打倒するべき「都市」はアメリカが主導する先進国、「農村」はそれ以外の国々で、中国は必然的に「農村」側の指導者ということになった。

ただ1976年に毛が死去すると、それから20年間は世界革命をうたうこともなくなった。

nwyt0928_0.jpg

その後、中国経済が持続的な高度成長に入ると、新しい共産党指導者を通じて古い帝国主義的な拡張主義が復活。

朝鮮戦争後、アジア太平洋におけるアメリカのプレゼンスは、中国が海洋上に設定した軍事的防衛ラインである「列島線」に基づく戦略を取ってきた。沖縄、台湾、フィリピンを結んで南シナ海に至る第1列島線沿いの同盟国を強化して、共産主義の進撃を阻止するというものだ。第2列島線と第3列島線でも同様に中国の封じ込めを試みている。

しかしアメリカは1970年代に第1列島線の一部を放棄し、台湾とフィリピンの米軍基地を手放した。冷戦勝利後の財政赤字削減計画の一環として、23の途上国で大使館を閉鎖している。

nwyt0929_2.jpg

その間に中国は太平洋島嶼国をやすやすと口説き落とし、30年足らずの間にグローバルサウスで高い支持を集めるようになった。

中国にとって、グローバルサウスへの投資がもたらす地政学的な見返りは小さくない。なかでも重要なのは、パナマ運河両端の港の管理権を確保したこと、ジブチに海軍基地を開設したこと、そしてミャンマー領の大ココ島に軍事施設を建設したことだ。中国はこれで、既に設置した南シナ海の人工島にある軍事施設と合わせて、世界3大水路の戦略的難所で通航妨害を行えるようになった。

nwyt0929_4.jpg

ただし、中国の勢いは周辺国との関係や経済の機能不全といった理由で弱まりつつある。最近の債務危機とパンデミックからの回復の失敗は、今後の見通しも厳しいことを物語っている。

一帯一路のインフラプロジェクトでは中国政府からの資金が枯渇し始め、アフリカでは中華思想が人種差別と表裏一体だと知られるようになってきた。

また、途上国は西側と中国の対立に巻き込まれることにも警戒している。

nwyt0929_5.jpg

こうした状況で、インドが中国に代わってグローバルサウスのリーダーとなる態勢を整えている。人権問題を抱えているものの、世界最大の民主主義国家として、中国のような政治的抑圧は行っていない。この展開を西側も受け入れようとしている。

nwyt0929_7.jpg

ただし、中国はインドの挑戦をおとなしく受けるつもりはない。インドにとって最も大きな脅威は、チベット高原から流れてくる水資源を完全に支配されることだ。また、中国はインドの敵国パキスタンに戦闘機や攻撃型潜水艦を供給している。

重要なのは、グローバルノースとサウスの仲介者としてのインドの立ち位置に、西側がしびれを切らさないことだ。

nwyt0929_8.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中