ナゴルノカラバフ紛争再燃で米露が抱えるジレンマ
Biden and Putin Have a New Shared Headache
ただし、アゼルバイジャンとの関係強化を、アメリカ議会の全員が認めているわけではない。上院外交委員会の委員長を務めるボブ・メネンデス上院議員(民主党、ニュージャージー州選出)は9月に入り、上院の議場において、「ナゴルノカラバフで現在も継続中の民族浄化」について、アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領を名指しで批判する発言をしている。
メネンデスは9月19日、上院外交委員会のX(旧ツイッター)アカウントが投稿した、同日のアゼルバイジャンの行動に関するメッセージをリポストした。
「ナゴルノカラバフに対するアゼルバイジャンの厚顔無恥な攻撃は、アルメニア系住民をこの地から一掃しようとするアリエフの邪悪な意図を裏付けるものだ」とこのメッセージは綴り、こう呼びかける。「アメリカと国際社会は、行動を起こさなければならない」
プーチンもこの紛争によって、自国の2つの同盟国の離反を招くリスクを抱えている。しかも、プーチン政権下でのロシアとアルメニアとの関係は、すでにほころびを見せている。アルメニアのニコル・パシニャン首相は、ナゴルノカラバフの領有権をめぐる争いに関してロシア政府からの支持がない、と批判してきた。
パシニャンは2023年に入り、ロシアが主導する集団安全保障条約機構(CSTO)からアルメニアが離脱する可能性もあると警告した。CSTOは6カ国からなる軍事同盟で、北大西洋条約機構(NATO)の小型版とも呼ばれている。
ウクライナ戦争で余裕がないロシア
ジョージ・メイソン大学のマーク・N・カッツ教授は本誌の取材に対し、ロシアは、これまでの紛争ではアルメニア側を支持してきた実績はあるものの、プーチンは「最近になって、アルメニアに対するアゼルバイジャンの動きに関して比較的寛大になっている」と指摘する。
「これにはいくつかの理由があるとみられる。第一に、西側寄りの傾向を増しているアルメニア政府にプーチンが不満を抱いている。第二に、ウクライナでの戦争により、ロシアのアルメニア/アゼルバイジャン戦域での展開能力が低下している。第三に、この紛争でアゼルバイジャンを支援しているトルコの(レジェップ・タイップ)エルドアン大統領との対立を避けたいと考えている、の3点だ」と、カッツは指摘した。
ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官は9月19日、ロシアはアゼルバイジャンとアルメニア両国の政府関係者と連絡をとりつつ、交渉を促していると述べた。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官もナゴルノカラバフの状況に触れ、ロシア政府は、同地域の「紛争の急速な激化を深く懸念している」と述べた。
ザハロワは記者会見で、「ロシアは対立する両国に対し、流血の事態をやめるよう強く呼びかけている」と述べた。「ただちに軍事行動を中止し、政治的・外交的な解決に立ち返るべきだ」
(翻訳:ガリレオ)
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら