ワグネルの今後は? プリゴジンなき「高級武装ブランド」について、1つだけ確かなこと【注目ニュースをアニメで解説】
Newsweek Japan-YouTube
<「プリゴジン死してもワグネルは死なず」──ワグネルはプーチン体制内でどのように生き続けるのかを考察したアニメーション動画の内容を一部紹介>
8月23日、傭兵組織ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジンが乗っていた小型ジェット機が墜落し、死亡。トップと複数の幹部を失った組織は今後どうなるのか。確かなことが1つだけある──。
本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「ワグネルの今後は?プリゴジンが消えても「高級武装ブランド」はアウトローを魅了し続ける【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。
プリゴジンの死がロシア大統領ウラジーミル・プーチンの指示した暗殺だったことはほぼ間違いない。凄惨かつ残酷な手口だが、これが自分に歯向かう者の運命だという見せしめとしては効果的だ。しかしそれは、プリゴジンが一代で築き上げたワグネルの「ブランド」にふさわしい死に方でもあった。
ワグネルという高級武装ブランドには過剰な暴力がよく似合う。
ウクライナ戦争で有名になる前から、組織はブランド構築の努力を続けてきた。国内外に向けた宣伝工作と人材確保のため、自主制作の映画を何本も発表している。
中央アフリカ共和国が舞台の2021年の作品『ツーリスト』では、戦闘員がいかに高度な訓練を受け、殺傷能力に優れたエリートかを描いた。
過激派組織「イスラム国」(IS)も斬首や火刑、人身売買などの動画をばらまいて心のゆがんだ男たちを集め、一般大衆には恐怖心を植え付けることに成功した。
一般受けする手法ではないが、一部の変質者を標的とするマーケティングには効果的だ。ワグネルも同じだが、その暴力性に魅せられるのは変質者だけではない。世界各地の独裁者や軍事政権、クーデターをもくろむ者たちもワグネルの大事な顧客だ。
ロシアの国営メディアもワグネルに好意的な映像を流してきた影響で、ワグネルは国内で人気を誇っている。
ただし、ウクライナでの愚行と蛮行のせいで国際的な評判を落とした。ならず者に粗末な武器を持たせ、まともな訓練もせずに戦場に送り込んだ今のワグネルは、もはや「高級武装ブランド」ではなく、ほぼ「暴力を自己目的とする無法集団」に成り下がっている。
そうは言っても、このブランドには今も一定の価値がある。オーナーのプリゴジンと複数の幹部を排除した今、プーチンはワグネル・ブランドの再構築を考えているかもしれない。今なら好きなように操れるからだ。
プーチンはワグネルを政府の指揮命令系統に組み込もうとするだろう。ロシア軍の指導部を批判することは当然許されない。
ただし、ワグネルの運営するテレグラム・チャンネル「グレーゾーン」には、報復を示唆するかのような宣言も掲げられた。
「ワグネル・グループの総帥にしてロシアの英雄、真の愛国者であるエフゲニー・プリゴジンは、ロシアを裏切る者たちのせいで命を落とした」
先は読めないが、確かなことが1つだけある。誰が次のブランドの顔になっても、過剰な暴力とその拡散が終わることはないということだ。
■詳しくは動画をご覧ください。