最新記事
ロシア

ロシアは北極海航路も中国とインド頼み

Putin and Xi's Arctic Gamble Thwarted by Icebreaker Shortage

2023年9月7日(木)14時56分
ブレンダン・コール

必要な財源と技術は中国に? 

<野心的な目標は立てたが、砕氷船が足りない!>

ロシアは北極圏における中国との貿易拡大を計画しているが、砕氷船の不足が障害になるかもしれない。

ロシアの北極圏開発を担当するアレクセイ・チェクンコフ極東・北極圏発展相は、ロシアの経済紙RBCに対し、来年までにロシア北極海航路経由で供給される貨物量3400万トンを2倍以上に増やす計画があるが、世界的に原子力砕氷船の数が不足している、と述べた。

今年3月に中国の習近平国家主席がモスクワを訪問した際、ウラジーミル・プーチン大統領は、北極海航路を開発するための共同作業組織の設立を発表した。北極海航路はノルウェーとの国境に近いムルマンスクからアラスカに近いベーリング海峡に至るヨーロッパとアジアを結ぶ最短航路ルートで、ロシアにとってスエズ運河の代わりになる重要な航路だ。

shutterstock_1725722488.jpeg
WindVector-Shutterstock


ロシアのバルト海から中国北部の石油精製所までの所要時間を劇的に短縮することが可能なこの航路について、ロシアは、インドとも協力体制を模索している。

プーチンは今年6月、インド、ブラジル、中国、南アフリカを含むBRICsサミットで、北極海航路を含むロシアの旗艦プロジェクトをどのように開発したいかを語った。北極海航路の開発には、新しい港、燃料ターミナル、砕氷船の数を増やす必要がある。

新たな船の建造も困難

チェクンコフはRBCの取材に答え、「私の最大の懸念は、十分な数の耐氷船団を確保できるかどうかということだ」と語り、2031年までに2億トンを輸送するというロシアの目標を達成するには船の数が足りないことを認めた。

最大の問題は、砕氷船を製造する造船所が不足していることだ。船の建造には「数カ月ではなく数年」かかるという。チェクンコフによれば、ロシアは新しい船の建造について中国やインドと協議している。

ロシア政府は2022年に、北極海航路で操業するための砕氷船と耐氷船50隻を建造し、港湾、サテライト、石炭、石油、液化天然ガス用のターミナルなど、操業に必要なインフラを整備する13年計画を承認した、とRBCは報じている。

今年3月、ロシアの北極圏開発プロジェクト室専門家会議のコーディネーターであるアレクサンドル・ボロトニコフは、ロシアのニュースメディアUra.ruに対し、ロシアは北極海ルートを開発するために、「財源と必要な技術」がある中国のようなパートナーを必要としている、と語った。

ロシアのドミトリー・メドベージェフ安全保障会議副議長副議長と北極海航路の運営会社で国営原子力企業ロスアトムの代表は昨年、砕氷船の数が不足していると警告した。RBCによると、メドベージェフは、ロスアトムが管理する砕氷船6隻の船のうち3隻が技術的に時代遅れになっていると述べた。

北極海航路は今年7月に開通し、ロシア産原油の代表油種ウラル原油を積んだタンカーがバルト海のプリモルスク港とウスチ・ルーガ港から中国山東省南部海州湾の日照市に向け出航した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中