防衛省、台湾に現役職員を常駐させ退役自衛官と2名体制に 意思疎通や情報収集強化へ
日本の防衛省が、台湾との窓口機関「日本台湾交流協会」の台北事務所に「背広組」の現役職員を常駐させたことが分かった。写真は2021年、台湾の桃園市で撮影(2023年 ロイター/Ann Wang)
日本の防衛省が、台湾との窓口機関「日本台湾交流協会」の台北事務所に「背広組」の現役職員を常駐させたことが分かった。中台の緊張が高まる中、日本は台湾との距離を徐々に縮めており、軍事を含めた情報収集や当局との意思疎通を強化する。事情を知る関係者4人が明らかにした。
日台間には国交がなく、台北事務所が査証発給など実務業務を担う日本の在外公館として事実上機能している。同関係者らによると、防衛省はこの職員を出向の形で派遣。以前から駐在する退役自衛官と2人体制にした。
「台湾当局とのコミュニケーションが良くなった」と、関係者の1人は説明する。
経済産業省や外務省など他の政府機関が台北事務所に現役職員を出向させる一方で、防衛省は中国が反発することを考慮し退役自衛官を常駐させるにとどめてきた。関係者らによると、現役の自衛官を派遣すべきとの声も今回あったが、背広組の防衛官僚を送ることにした。
現役の防衛省職員を台北事務所に派遣する計画は、日本の一部メディアが昨年報じていた。関係者らによると、報道を受けて派遣は延期された。
防衛省はロイターの取材に、従来から日本政府の職員が休職して交流協会に出向しているとする一方、「職員ひとりひとりの人事について個別に答えることは困難」と回答。台湾とは1972年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係を維持していくとの立場だと説明した。
台湾外交部はこの件に直接言及せず、「日本政府が国際社会において、台湾海峡の平和と安定の重要性を繰り返し確認し、力による一方的な現状変更に反対していることに感謝する」とコメントした。
日台間は1972年の断交以降も議員外交など非政府間の実務関係を維持し、とりわけ2016年に蔡英文政権が発足して以降は民進党と自民党との交流が活発化している。
両党は外務・防衛について協議する与党間2プラス2をこれまでに4回開催した。8月に台北で講演した自民党の麻生太郎副総裁は抑止力の重要性を強調し、日米や台湾にはいざとなったら戦う覚悟が求められると語った。
日本政府も昨年末に改定した安全保障3文書で台湾情勢に触れ、「台湾海峡の平和と安定は、国際社会の平和と安定と繁栄に不可欠」と明記した。
(金子かおり、豊田祐基子、Tim Kelly、村上さくら 取材協力:Ben Blanchard 編集:久保信博)