「アフリカの危機は人類の課題」連携強化に向けた日本の役割とは【TICAD30年】
アフリカとの対話を通じ、信頼関係を築いてきたTICAD
──1993年に始まったTICAD(アフリカ開発会議)が今年で30周年を迎えます。日本とアフリカの協力枠組みであるTICADの意義について教えてください。
田中 TICADが始まった当時、日本はアフリカとそれほど強いつながりはありませんでした。しかし、30年前に長期的に成長の可能性があるとされていたアフリカとの関係を深めるために対話の枠組みをつくったのは賢明な選択でした。また、30年という長い期間をかけてアフリカとの対話を通じて信頼関係を築いてきたことは大変重要だったと思います。
TICADは、いわゆる先進国が途上国を援助するのではなく、アフリカの指導者や人々の意見を聞きながら、さまざまな問題に一緒に対処しようというアプローチをとってきました。当初より国連や世界銀行といった国際機関と共同開催するなど、他国が現在進めているアフリカとの対話の枠組みと比べて、より開放的な形になっている点も特徴です。
2000年代に入り、アフリカで民間投資の重要性に対する声が高まってきたことを背景に、現在TICADは開発協力のみならずアフリカの経済・社会発展にさらに広い形で貢献していくことを話し合う場となっています。
──TICADを通じた長年にわたる日本の協力は、アフリカが直面する複合的な危機からの復興にどのように役立つでしょうか。
田中 重要なのは、中長期的に見て、危機にどのように耐えることができるかという視点です。莫大なお金を投じて、一気に何かをやるというよりも、人材育成や技術・ノウハウの積み重ねを通して状況を改善し、危機に対処していく方法を広く普及させる方が、社会全体の強靭性を強めていくことに役立つと考えます。
アフリカの成長を促す基盤づくりを進め、さらなる連携強化を支えるJICAの役割
──TICADの歴史とともにJICAが日本とアフリカの連携強化において果たしてきた具体的な取り組みについて教えて下さい。
田中 人口増加に備えて立ち上げたのが「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」です。2008年のTICADIVで表明され、2018年までの10年間でコメの生産量倍増を実現しました。2030年までにさらに倍増させる計画です。資金を大量に投入するのではなく、効率のよい稲の植え方やかんがいの仕組みなど、細かいノウハウを伝えることで、収量の向上を進めています。