最新記事
アフリカ

「アフリカの危機は人類の課題」連携強化に向けた日本の役割とは【TICAD30年】

2023年8月30日(水)11時30分
※JICAトピックスより転載

田中 人材育成における代表的な取り組みとしては、2013年のTICADVで提唱された「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)」があります。日本の大学での修士号取得と企業でのインターンシップの機会を提供するプログラムで、これまでに1,600人以上が参加しています。帰国後は多くの修了生が日本企業とのつながりを維持し、母国で起業したり、日本企業との仲介役を担うなど、まさしく日本とアフリカの架け橋になっています。

TICAD_Photo_5.jpg

米の消費量が増えているカメルーンで、水田における稲穂の観察方法を指導する日本人専門家(写真提供:PRODERIP)

TICAD_Photo_6.jpg

ABEイニシアティブに参加し、インターンとして日本企業の職人から指導を受けるモーリタニアからの研修員(写真提供:株式会社サンテック)

製造業育成のため、日本式の品質・生産性向上の手法を取り入れた「カイゼン」プロジェクトも、2000年代のチュニジア・エチオピアを皮切りに、2016年のTICADVI以降、多くのアフリカ諸国に広がっています。現地の事情に合わせて、どうしたら無駄なく効率よく生産できるか、日本人専門家が丁寧にアドバイスしています。

どの取り組みもJICAだけで行っているわけではありません。JICAの取り組みに対して国内の民間企業や大学から協力を得ているほか、それぞれの国や開発機関などと共に進め、ある国の好事例が他国に波及していく形で広がっています。

──アフリカの将来的な成長や社会経済の安定化に向け、JICAは今後どのような取り組みに注力していきますか。

田中 アフリカ側からは民間投資の底上げを期待する声が高まっています。それには、日本の民間企業がアフリカできちんとビジネスできる基盤をつくることが不可欠です。しかしインフラ整備や制度・仕組みづくりなど、アフリカ諸国の政府だけではそうした基盤を整備することは難しい。このような基盤づくりにJICAのような開発機関が協力していくことが必要だと考えています。

中でも、広大なアフリカの国々を結ぶ「コネクティビティ(連結性強化)」への取り組みは重要です。港湾、道路、送電線などのインフラを整備し、沿岸部と内陸部、都市部と農村部の格差を是正させるために、「回廊(コリドー)」と呼ばれる重要幹線の整備を進めていきます。

他には、アフリカ発のスタートアップ(新興企業)支援があります。スタートアップ企業の成功率は低いかもしれません。ただ、失敗を恐れていては、本当に成長するスタートアップは生まれてこない。ですから、まずは挑戦を可能にする「シード(種)」となる資金へのアクセスや、スタートアップの挑戦を支える関係機関の能力強化や制度整備などのエコシステム構築支援を行うことが大事です。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エアバス、11月の納入数が減少 胴体パネル問題で

ワールド

台湾最大野党主席、中国版インスタの禁止措置は検閲と

ビジネス

ドイツ景気回復、来年も抑制 国際貿易が低迷=IW研

ワールド

台湾、中国の軍事活動に懸念表明 ロイター報道受け
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 10
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中