「アフリカの危機は人類の課題」連携強化に向けた日本の役割とは【TICAD30年】
田中 今後のアフリカの開発では、IT(情報技術)やAI(人工知能)など、新しい技術をどう活用するかも重要です。アフリカでは、先端技術を導入することで、欧米や日本、アジアと同じ道筋を踏まずに、経済・社会システムを一気に進展させる動きが生まれています。ケニアでは、携帯電話の普及により、銀行口座を持たない人でも少額の送金ができるサービスを、世界で初めて実現しました。こうしたイノベーションへの支援は、アフリカの今後の可能性を大きく支えることになります。
──アフリカに対する日本の協力は、世界の安定や繁栄にどのようにつながっていくのでしょうか。
田中 今の複合的危機というのは、離れていてもつながっています。例えば、気候変動の問題は地球全体で温室効果ガスが減らないと、日本を含む世界各地に異常気象や自然災害をもたらします。地球上のどこかで持続可能性を脅かす活動が行われれば、それは日本にいる私たちに直結するのです。
また、アフリカの社会課題に現地の人々と協力して取り組んだ成果やイノベーションが、今後はアフリカだけにとどまらず、日本そして世界の生活を向上させる可能性もあります。アフリカで活動していた海外協力隊員が、日本に帰国後、スタートアップを立ち上げ、アフリカと日本との関係を丁寧に築いている例も多数あり、実は日本にとってアフリカは、かなり身近になってきていると私は感じています。
ますます重要性が高まるアフリカと向き合い、さらに強固な関係を築いていくと同時に、今、アフリカで起きているダイナミックな変化を良い方向にもっていけるよう、後押ししていきたいと思います。