あなたもSNSで連絡もらった? ロマンス詐欺の発信元は貧困に苦しむガーナの若者
政府は7月、ソーシャルメディアの利用とサイバーリスクについて生徒に教えるための全国的な学校プログラムを始動した。
ガーナとナイジェリアは今年、国境を越えた犯罪、特にオンライン詐欺などのサイバー犯罪への取り組みを強化する方針を打ち出した。両国ともサイバー法が導入されており、定期的に捜査を実施しているが、サイバー犯罪捜査を専門とするレックスフィールドの創業者、マイク・ロバーツ氏によると、起訴されることはまれだ。「詐欺行為に対する最大の抑止力は法の裁きだ。人をだまして捕まることはないと思えば、詐欺をやめることはない」と述べる。
詐欺の手口
ガーナのサイバーセキュリティ当局は2022年の報告で、オンライン詐欺の摘発件数の大半をなりすましが占めており、これはソーシャルメディアのアカウント作成が容易になったためだと分析した。
英国のサイバーセキュリティ企業ソフォスX―Opsの研究者、ショーン・ギャラガー氏は、ガーナなど西アフリカ地域の犯罪者は仮想通貨のアカウントを使って送金するなど、中国のロマンス詐欺のテクニックを真似ていると指摘した。
同氏によると、フェイスブックやツイッター(現X)のハッキングされたアカウントを売買する市場があり、仮想通貨や現金で購入することができる。
他のソーシャルメディアのアカウントからコピーした写真などを使い完璧なプロフィールを作り上げる場合もあり、こうした仕組みは既に産業レベルに達しているという。
ニューヨーク州で医療費請求会社を経営するシングルマザーのティナさん(57)は、2019年に出会い系サイトでレイ・ディクソンと名乗る宝石の専門家と知り合った。航空券や家賃、生活費などのためにお金が必要だと言われ、2年以上にわたり計20万ドルをだまし取られた。
友人や銀行からお金を借りまくり、送金をやめたのは何もかも無くしてからだった。相談を受けたロバーツ氏が捜査機関などと協力して調査や追跡を行い、ティナさんがお金を取り戻せるよう手助けしている。追跡の結果、詐欺を働いたのはガーナの犯罪ネットワークだったことが分かった。
スレイマンは、ティナさんのような女性のことを考えると自己嫌悪に陥るという。1年以内には詐欺から足を洗うと決心し、大学に行くために毎月200ドルを積み立てている。それでも「今のところ他に選択肢はない。病気の父を看病し、母を助けなければならないから」と─。
(Bukola Adebayo記者)