韓国のリーダーシップに中国が激オコ...問われる日米韓「3国同盟」の本気度
歴史的な首脳会談は尹大統領の尽力で実現した(8月18日) EVELYN HOCKSTEINーREUTERS
<緊張した日韓関係の修復を目指す、尹錫悦大統領の尽力で叶った3カ国首脳会談...。中国から韓国への「圧力」にアメリカは本気で対抗する準備があるか>
日米韓の首脳が8月18日、米メリーランド州にある大統領の保養地キャンプデービッドで会談した。3カ国の首脳会談は過去に何度もあったが、NATO首脳会議やG7サミットのような多国間協議に合わせて行われるのが常だった。「単独」での3カ国首脳会談は今回が初めてだ。
この歴史的な一歩は、緊張した日韓関係の修復を目指す尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領の努力のたまものでもある。
日本との協力関係強化が国家安全保障にとって極めて重要だと、尹は一貫して強調してきた。そのせいで韓国国内では、日韓関係改善のために国を売ったと非難されたほどだ。
実際、尹の対日接近政策は韓国では評判が悪く、日米韓の協力強化は短期間で崩壊しかねない。今回の首脳会談で発表された構想は、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が中国に約束した内容と真っ向から矛盾してもいる。
米韓が朴槿恵(パク・クネ)元大統領の決定に基づき、THAAD(高高度防衛ミサイル)システムの配備を正式に開始したのは2017年。THAAD配備に反対して強い警告を発していた中国は、非公式な(だが影響の大きい)韓国への経済制裁を打ち出した。
中国は韓国への団体旅行を禁止。国内でのKポップのコンサートや韓流ドラマの放映も中止した。その結果、韓国は17~19年、観光業だけで推定240億ドルの損失を出した。
文は経済的ダメージに対処するため、対中関係修復に動いた。THAADの追加配備、米主導のミサイル防衛システムへの参加、日米韓軍事同盟への参加はしないという「3つのノー」を約束したのだ。
だが、現政権はTHAAD以外の2つの「ノー」を「イエス」に変える方向性を模索し始めた。中国から見れば、事実上の3国軍事同盟と統合弾道ミサイル防衛網の土台造りのように見えるはずだ。
そもそも尹政権は3つのノーを否定している。朴振(パク・チン)外相は国会でこう述べた。
「3つのノー政策は中国と約束したものではない。私の知る限り、(当時の政権は)中国に対する自分たちの立場を説明しただけだ」。実際、3つのノーに関する正式な合意は存在しない。
今のところ中国の反応は抑制されているが、不快に思っているのは明らかだ。