「日台友好」の象徴、「オレンジの悪魔」京都橘高校吹奏楽部を強豪へと押し上げた 「弱弱指導」とは?
Kyoto Tachibana SHS Band
【公式】京都橘高校吹奏楽部-Youtube
<「オレンジの悪魔」と称される京都橘高校吹奏楽部。その派手な演奏とユニークな教育方法が、世界を魅了し、台湾では教育改革のモデルとして注目される。本誌「世界が尊敬する日本人100」特集より>
京都橘高校吹奏楽部は派手なオレンジ色の衣装と、演奏しながら跳んだり走ったりの激しい動きが有名で「世界一体力を使う吹奏楽部」とも言われる。
【動画】「日台友情年」記念イベントで演奏する京都橘高校吹奏楽部
その知名度はYouTubeを通して広がり、テレビでも取り上げられた。全日本マーチングコンテストの常連であり、金賞受賞も多数。世界最大の集客を誇る米ローズパレードにも2012年と18年の2度にわたって招待され、高校生たちはいつしか「Orange Devils(オレンジの悪魔)」と呼ばれるようになった。
「オレンジの悪魔」がグローバルブランドであることをさらに印象付けたのが、昨年10月10日の台湾ナショナルデー(建国記念日)の「日台友情年」記念イベントだ。招聘された彼らは蔡英文総統ら居並ぶ台湾政界の大物たちの前で、15分間にわたって堂々のパフォーマンス。通常は軍事パレードが目立つセレモニーだが、昨年は華やかなオレンジ色の衣装に身を包んだ日本の高校生たちが主役になり、蔡総統のサプライズ面会など「熱烈歓迎」のもてなしを受けた。
台湾で脚光を集めた理由は派手な演奏に加え、「弱弱指導」と呼ばれるユニークな指導法にあった。同吹奏楽部は女子、男子合わせ100人を超える大所帯。壁にぶつかっても意見の不一致があっても、教員側は介入を最小限に抑え、上級生が下級生をサポートしながら部員間で知恵を絞って課題の解決を目指すスタイルだ。
見事に統率の取れた演奏はスパルタ教育のたまものかと想像してしまうが、実はその正反対というギャップが新鮮だったようだ。少子化が日本以上に深刻な台湾で教育問題は最大の関心事の一つ。台湾社会ではその後、「橘色悪魔(オレンジの悪魔)に学ぶ〜」が流行語のように連日メディアをにぎわし、台湾の学校教育にインパクトを与えた。長年顧問を務めた田中宏幸の著書『オレンジの悪魔は教えずに育てる』も、台湾で翻訳出版された。
演奏だけでなく教育的側面でも、ユニークな日本の高校生が学びの対象とされたのだ。