最新記事
ロシア情勢

プーチンは国内の反乱再燃が怖くて攻撃できなくなっている──ウクライナ高官

Putin Rebellions Threaten Russia Defense Against Cunteroffensive: Ukraine

2023年8月2日(水)15時25分
アンドリュー・スタントン

攻めあぐねるプーチン Sergei Bobylyov/TASS Host Photo Agency/REUTERS

<ウクライナ軍の反転攻勢に対してプーチンは再攻撃を望んでいるが、国内で盛り上がるプーチン批判への対応に追われて身動きできない状態だと、ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記はツイートした>

【動画】慣れていない? エジプト大統領に待たされ、プーチンが所在なく部屋をうろつくシーン

ウクライナの政府高官は8月1日、ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア国内の反政府デモの広がりを恐れるあまり、ウクライナに対する再攻撃に踏み出せずにいるかもしれない、という認識を示した。

ウクライナのオレクシー・ダニロフ国家安全保障・国防会議書記は1日、ロシア政府が2022年2月に開始したウクライナ侵攻に「不満」をいだくロシア国民の抗議に直面する可能性があると、ツイッターで警告した。

プーチンは当初、この「特別軍事作戦」が迅速な勝利をもたらすことを期待していた。だが、同盟国からの数十億ドルの援助によって強化されたウクライナの予想以上に強力な抵抗によって、ロシア軍の目標達成は妨げられている。

ここ数週間、ウクライナは現在ロシア軍に占領されている地域の奪還をめざして反攻を開始、すでに、占領されていた領土の大部分を取り戻している。ロシアでは、軍幹部の戦争への対応に対する批判も出ている。

こうした批判の声は、ウクライナでロシア軍とともに戦った民間軍事会社ワグネル・グループが6月に起こした反乱未遂事件で頂点に達した。反乱は最終的に失敗し、ワグネルの部隊はベラルーシに追放されたが、この事件は、開戦以来最も直接的なプーチンの権力に対する脅威となった。

反プーチンデモの脅威

ダニロフによれば、ロシア政府はその指導力に対する批判を将来的な脅威と感じており、それがロシア軍のキーウに対する第二次攻撃の実施を妨げている可能性があるとウクライナ当局は考えている。

「ロシア政府の現状は、さらなる反政府デモに対応する準備を急ぐ必要があるため、キーウに再度攻撃をかけたい気持ちはあっても、二の足を踏んでいるというところだ」と、彼は書いている。

ロシア政府はこれまでのところ、こうした指摘を認めていない。

昨年、ウクライナ侵攻を開始したロシアはまず首都キーウの制圧を試み、市の郊外で破壊行為を繰り広げ、民間人に対する人権侵害でおおいに非難された。だが首都制圧の試みは失敗に終わり、戦闘は現在もウクライナの最東部に集中している。

ダニロフは、ロシア政府に対するさらなる抗議行動が「そう遠くない時期に起こる」可能性を示唆した。ただし、これは第三者によって検証された話ではない。

「ペーストはチューブから絞り出された」と、ダニロフはツイートした。「様々な不満を持つ人々による抗議行動がロシア各地で拡大している。ペーストは、いったんチューブからしぼり出したら元に戻すことはできない」

この発言は、2014年にプーチンがウクライナから併合したクリミア半島の親ウクライナ派住民と、半島に駐留するロシア軍との対立が「高まっている」というウクライナ国防省情報総局(GUR)の報告に基づいている。

社会的価値創造
「子どもの体験格差」解消を目指して──SMBCグループが推進する、従来の金融ビジネスに留まらない取り組み「シャカカチ」とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:ウクライナ巡り市民が告発し合うロシア、「密告

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中