欧州に台頭する「右派ポピュリズム」に、なぜか無縁のスペイン人...「スペイン精神の底力」とは?
SPAIN IS DIFFERENT
国民党とボックスの連立は、地方自治運動を背景としたスペイン内戦時代の暗黒と分断の再現につながると、サンチェス陣営は訴えていた。
民族主義地域政党とよりよい関係にあるサンチェスのスペイン社会労働党が、より政権獲得の可能性が高くなっているのは重要な点だ。
とはいえ地域政党にとって、見返りなしの連立合意はあり得ない。しかしカタルーニャ独立を問う住民投票実施の権利といった地域政党の要求は、右派には受け入れ難く、右派の怒りを買うのはほぼ確実だ。
スペイン社会労働党が地域政党と手を組めば大きな論争を招き、スペイン政治が危険な新局面を迎える可能性がある。
むしろ、スペインはスペイン社会労働党と国民党の大連立の道を探るべきだ。こうした形の連立は、民主化当初の特徴だった和解や合意、責任ある政治家精神を体現することになるだろう。
だが何が起きても、スペインなら乗り切れる。かつて、同国の哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセットは「スペインは問題だ。欧州は解決策だ」と記した。
スペインはこの言葉を胸に刻み、1986年にEUの前身のEC(欧州共同体)に加盟して以来、熱烈な親欧州主義者として行動している。
政治的信条を問わず、スペイン国民は今後も欧州的価値観への信念によって結束する。ハンガリーやポーランドで根付いた反自由主義に、この国は無関心なのだ。
シュロモ・ベンアミ
SHLOMO BEN-AMI
イスラエル元外相。世界各地の紛争解決を目指す「トレド国際平和センター」副所長。著書に『戦争の痕、平和の傷──イスラエルとアラブの悲劇』がある。