衛星画像で浮かび上がったウクライナ前線を縁取る巨大な悲劇
Ukraine Satellite Map of Unharvested Crops Reveals Current Front Line
カホフカ・ダム破壊の地球規模の影響は宇宙からでもはっきり見える(7月5日、ロシア支配下のヘルソンで) REUTERS/Jonathan Ernst
<ロシア占領地とウクライナとの境界に、宇宙からも見える緑の傷と灰色の傷が。これはいったい?>
ウクライナがロシア軍に夏の反攻を仕掛けるなか、最新の衛星地図で、ウクライナ南部の前線をなぞるように存在する「作物が収穫されていない畑」の帯が確認された。悲劇の帯だ。
<衛星画像>灰色の傷は干上がった貯水地、緑の傷は収穫できない農作物
この画像の右に写る一筋の緑は、ウクライナ南西部に広がる未収穫の農地だ。6月にロシアの攻撃でカホフカ・ダムが決壊したときに土と一緒に流出した地雷が無数に埋まっており、危険過ぎて収穫ができない。画像の左手に灰色の傷のように見えるのは、ダム決壊で干上がったカホフカ貯水池だ。
「宇宙から見ても、ウクライナの前線がこんなにくっきりと見えるなんて驚きだ」と、画像を投稿したベルリンのオープンソース・ジャーナリスト、マイケル・クルックシャンクはコメントしている。
ヨーロッパの穀倉地帯として知られるウクライナでの戦争は、世界的な食糧不足の懸念を引き起こしている。ロシアが7月に穀物合意から離脱し、ウクライナの穀物を黒海経由で輸出できなくなったことで、状況はさらに悪化した。
それ以前から、6月6日のカホフカ・ダム破壊のせいで、ヨーロッパ最大級の貯水量を誇ったカホフカ貯水池の水量は減っている。ウクライナ南部の農業地帯の多くで、水の供給量が激減していることも衛星画像で確認されている。周辺では、農業従事者たちが地雷だらけの農地との格闘を強いられている。
「ウクライナは現在、第2次世界大戦以降で最も深刻な地雷汚染に直面している」と、カホフカ・ダムの破壊で水没した地域の地雷撤去に取り組む英国の慈善団体ヘイロー・トラストの言葉だ。
国連食糧農業機関(FAO)のピエール・ヴォーティエによれば、「前線周辺の家族経営や小規模農家の多くは、自分の農地が危険だとわかっているので作付けを控えている。そうでなければ、命を危険にさらしながら作付けをしている」
ウクライナ当局によれば、北東部のハルキウ州と南部のヘルソン州の農地100万ヘクタール超の土地にも地雷がまかれているという。
(翻訳:ガリレオ)