最新記事
注目ニュースを動画で解説

【アニメで解説】ウクライナ戦争と「秘密のルール」...水面下でCIAが果たす重大な役割、アメリカの見えざる関与とは?

2023年8月14日(月)17時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ウクライナ戦争と「秘密のルール」

Newsweek Japan-YouTube

<ウクライナにおけるCIAの活動について解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>

アメリカの情報機関は「秘密のルール」に基づいてウクライナ戦争に関与し、ゼレンスキーとプーチンの真意を読み解こうとしている。ウクライナにおけるCIAの活動について、本誌が詳しく調査した。

本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「ウクライナ戦争と「秘密のルール」...水面下でCIAが果たす重大な役割、アメリカの見えざる関与とは?【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。

※この動画は「「そこには秘密のルールがある」と米高官...CIAが戦う水面下のウクライナ戦争」に基づいています。著者は、元米陸軍情報分析官のウィリアム・アーキンです。

 
 
 
 
◇ ◇ ◇

取材に応じた専門家や政府高官は、CIAはウクライナともロシアとも良好な関係を維持しており、情報と物資を巧みに動かし、さまざまな国との調整も行っていると認めた。

バイデン政権で対ウクライナ政策の立案に関与している高官は「ウクライナで起きていることの全ては秘密の戦争であり、そこには秘密のルールがある」と述べた。

国家安全保障関連の当局者多数によれば、アメリカとロシアはその「秘密のルール」を長い年月をかけて築き上げてきたという。

nwyt0804_2.jpg

今回の戦争で、アメリカはウクライナを全面支援しているが、両国間に同盟関係は存在していない。ウクライナを助けているものの、アメリカがロシアと戦っているわけではない。

こうした特異な状況ゆえ、対ウクライナ支援の実態は秘密の壁に守られており、本来なら米軍がするべきことまでCIAが代行している。

nwyt0804_4.jpg

バイデンは就任当初からCIAを重視し、外交官出身で駐ロシア大使を務めた経験もあるウィリアム・バーンズ長官を「世界のトラブルシューター」として重用してきた。

CIAの長官なら、外国の指導者とも秘密裏に意思疎通を図ることができ、地政学的に重要な局面では陰に陽に動くことも可能だ。軍人の出番とも文民の出番とも言い難い微妙な領域で立ち回り、組織を動かすこともできる。

nwyt0804_5.jpg

CIAは早くから西部国境地帯におけるロシア軍の兵力増強に気付いており、侵攻開始に先立つ21年11月に、バイデンはバーンズをモスクワに派遣した。

その後の侵攻を防ぐことはできなかったが、米ロ両国間にある昔ながらの秘密のルールは守られたと匿名の高官は言う。

米軍が前線に出ず、ロシアの政権交代を求めないことをバイデン政権が確約した代わりに、ロシア側は攻撃対象をウクライナ国内に限定するという暗黙のルールに従って行動することを約束した。

nwyt0804_7.jpg

戦争の長期化が必至になった昨年夏、アメリカはウクライナの戦闘能力を維持するための武器供与に踏み切り、高性能で超射程の武器を提供開始。その代わりにゼレンスキーは「アメリカの供与した武器でロシア領内を攻撃しない」という約束を守らなければならなかった。

これ以外にも、CIAは多くの国々を説得してバイデン政権の設けた条件を受け入れさせた。CIAの要員は、米軍の人間が行けないような場所へ平気で赴き、軍人にはできないことをやり遂げている。

nwyt230814_ciauk.jpg

この戦争が始まってから、ウクライナはアメリカと「ロシアをダイレクトに攻撃しないと約束すれば、アメリカは武器と秘密情報を提供する」という裏協定を結んだ。この協定は、つい最近まで守られてきた。

しかし昨年9月、ノルドストリームのガスパイプラインが爆破された。ロシア国内の施設ではないものの、パイプラインの実質的所有者はロシアの国営会社ガスプロムだ。CIAは疑念を抱いたが、当時のウクライナ政府は関与を否定した。

10月にはウクライナ側が攻撃目標の1つに挙げていたクリミア大橋がトラック爆弾で破壊された。実行犯は不明だが、プーチンはウクライナの「特殊部隊」の犯行と決め付けた。

軍情報部の匿名高官は、「クリミア大橋への攻撃でCIAは学んだ。ゼレンスキーは自国の軍隊を掌握できていないか、あるいは特定の作戦行動については目をつぶっているか、そのどちらかだ」と言う。

nwyt0804_13.jpg

CIAは「知らぬ存ぜぬ」で通してきたが、今年5月3日にクレムリンがドローンで攻撃されると、ロシア連邦安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は米英を名指しで非難。一方でウクライナ政府は暗に関与を認めた。

あるポーランド政府高官は「CIAはウクライナという国家の本質を理解できていないようだ」と述べ、裏協定を守るようにウクライナ政府を説得するのは不可能に近いと本誌に語った。

破壊工作や越境攻撃で新たな複雑な状況が生まれているのは事実だとし、ウクライナによる破壊工作が続けば、「悲惨な事態」につながる可能性があると、国防総省の匿名高官は警告している。

nwyt0804_16.jpg

■詳しくは動画をご覧ください。

キャリア
企業も働き手も幸せに...「期待以上のマッチング」を実現し続ける転職エージェントがしていること
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マスク氏は宇宙関連の政府決定に関与しない=トランプ

ワールド

ECB、在宅勤務制度を2年延長 勤務日の半分出勤

ビジネス

トヨタ、LGエナジーへの電池発注をミシガン工場に移

ワールド

トランプ氏、米ロ協議からの除外巡るウクライナの懸念
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 2
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「20歳若返る」日常の習慣
  • 3
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防衛隊」を創設...地球にぶつかる確率は?
  • 4
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 7
    祝賀ムードのロシアも、トランプに「見捨てられた」…
  • 8
    ウクライナの永世中立国化が現実的かつ唯一の和平案だ
  • 9
    1月を最後に「戦場から消えた」北朝鮮兵たち...ロシ…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 7
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 8
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中