17歳で4大大会優勝、世界ランキング1位のテニス界の新星...なぜ小田凱人は「神(GODA)」なのか?
DYLAN MARTINEZーREUTERS
<尊敬する「世界の国枝」超えの、パラリンピック3連覇を目指す小田凱人(ときと)。17歳にして既に王者の風格と子供たちのヒーローに。本誌「世界が尊敬する日本人100」特集より>
今年6月、テニスの4大大会、全仏オープンの車いす部門の男子シングルスで史上最年少優勝を飾り、世界ランキングも1位になった小田凱人(ときと)は、まだ17歳だ。
新星誕生の期待感はあった。1月に引退した国枝慎吾が、選手生活の間に4大大会とパラリンピックの全てを制する「生涯ゴールデンスラム」を達成した昨年のウィンブルドン選手権で、こう予言していた。
「凱人はスーパーなタレント。すごく近い将来、世界のトップになりますよ」
それにしても、昨年の全仏で4大大会にデビューした少年が世界のトップに駆け上がったそのスピードは驚異的だ。
今年7月は「聖地」といわれるイギリスのウィンブルドン選手権も制した。表彰式でのスピーチで、「本当は(お祝いに)シャンパンを開けたい気分だけど、僕はまだ17歳なので炭酸水で乾杯するよ」と、粋なコメントでイギリスの観衆を沸かせた。
チャンピオンズディナーでは黒のタキシードを着て、男子テニスの世界1位、カルロス・アルカラス(スペイン)との笑顔のツーショット写真をインスタグラムにアップした。その立ち居振る舞いは、既に王者の風格が漂う。
「表彰式のスピーチは決勝前夜には一応、考えていましたね。観衆の人は、僕が17歳ってそれまで知らなかった人もいたんじゃないかな」と、筆者に語る。思考回路は勝つ前提で回っていたわけだ。
緊張よりもワクワクが上回る。豪快に振り抜くショットは、爽快感があふれる。
「それが持ち味ですし、そもそも練習から守りに入るような打ち方は習っていない。僕は思い切り打ちます。攻めます」
勝負の世界が、性に合う。SNSでは外国のテニスファンから、英語で「神」を意味する「GOD」と小田の「ODA」をもじって、「GODA」として称賛される。
サッカー少年だった小田は9歳を迎えるころ、左股関節に発症した骨肉腫の影響で左脚が不自由になった。入院中、主治医にパラスポーツの魅力を説かれた。
失意のベッドで、2012年ロンドン・パラリンピックで金メダルを獲得したときの国枝の決勝の雄姿を見て、クギ付けに。