中国、秦剛外相を解任 王毅氏が復帰
中国全国人民代表大会(全人代、国会)常務委員会は25日の会議で、秦剛外相を解任し、前外相の王毅共産党政治局員を後任とする人事を決定した。国営メディアが報じた。写真は1月15日、カイロでエジプト外相と会談する秦剛氏(2023年 ロイター/Mohamed Abd El Ghany)
中国全国人民代表大会(全人代、国会)常務委員会は25日の会議で、秦剛外相(57)を解任し、前外相の王毅共産党政治局員(69)を後任とする人事を決定した。国営メディアが報じた。
新華社によると、習近平国家主席が主席令に署名した。
秦氏は駐米大使を務め、昨年12月に外相に就任したが、6月25日に北京で外交高官と会談したのを最後に約1カ月間、公の場に姿を現していなかった。
7月に入り、インドネシアで開催の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合も欠席。中国外務省は、健康上の理由で休んでいると説明したが詳細は不明で、さまざまな憶測が飛び交っていた。
国営メディアは秦氏が解任された理由を報じていない。中国外務省からコメントは得られていない。
中国当局者の動静不明は初めてではない。昨年には工業情報相だった肖亜慶氏が1カ月近く公の場に姿を現さず、汚職で調査されていたことが後に明らかになった。
秦氏は中国最年少の外相の一人で、習近平国家主席に近いとされる。06─14年に外務省報道官を2回務めたほか、習主席の外国首脳との会談の多くを調整するなどした。
王氏は2013年から22年まで外相を務めた。中国と米国がウクライナ、ロシア、台湾から貿易や技術論争に至る幅広い分野で対立する中、再度外相に就任する。
米国務省のパテル副報道官は25日の定例会見で、中国の外相を選ぶのは中国だとした上で、ブリンケン国務長官と王氏は複数回会談したことがあると指摘。「われわれは王外相や他の中国当局者との関与を続ける。対話ルートを維持することが極めて重要だ」と述べた。
ブリンケン氏は中国訪問中の6月18日に秦氏と会談し、協議継続のため同氏をワシントンに招いた。
王氏も招請されるかとの問いに対しパテル氏は「訪米するか発表するのは中国だ」と述べた。
オーストラリア国立大学の政治学者、ウェンティ・ソン氏は「王氏が適切な肩書きを持たずに外相レベルの会議に出席し続けるという事態を避けたかったのではないか」と指摘。シンガポール国立大学のジャ・イアン・チョン准教授(政治学)は「何の説明もないこと自体が、多くの疑問を投げかけている」とし、「誰もが不可欠な存在ではないことが示された。現在の政治システムの不透明さと予測不可能性に加え、恣意性さえも浮き彫りになった」と述べた。
米ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターの中国プログラムディレクター、ユン・スン氏は「王氏という人選は合理的」とし、「中国は安定感と信頼感を示すため、上級で権威があり、非の打ちどころのない人物を選ぶ必要がある」という見方を示した。
秦氏が国務委員としての職務を引き続き務めるかどうかは明確になっておらず、秦氏の政治的将来は不透明と指摘される。
米シカゴ大学のダリ・ヤン政治学教授は「説明なしに解任されたことで、秦氏に関する噂や憶測はそのままとどまる」とし、「彼の将来はうやむやとなり、中国の政治システムの不透明さを改めて浮き彫りにした」と述べた。