最新記事
防空システム

モスクワへのドローン攻撃が露呈した「ロシア防空システムの間抜けな弱点」

Ukraine exposes critical flaw in Russia's defenses

2023年7月25日(火)18時37分
アンドリュー・スタントン

ロシアの対空ミサイル「パーンツィリ」(ロシア占領下の東部ルハンスク、1月25日) Alexander Ermochenko-REUTERS

<自分より高いところを飛ぶものしか撃墜できないのに、パーンツィリはプーチンをはじめとする要人邸や中央官庁の屋上に設置されている>

7月24日、ウクライナのドローンがロシアの首都モスクワを攻撃。これによって、ロシアの防空システムに重大な欠陥があることが露呈したと、ウクライナのある軍当局者は指摘した。

ロシア政府は24日、首都モスクワがウクライナのドローン2機の攻撃を受けたと発表。ロシア国防省の建物の近くと商業ビルに被害をもらしたと明らかにした。モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長によれば、この攻撃で犠牲者は出ていない。ウクライナは、ロシアに占領された土地を奪還するために反転攻勢を展開している。

2機のドローンがロシア国防省を標的にしていたのかどうかは分かっていない。ウクライナ国防省情報総局のアンドレイ・ユソフ報道官は、今後も反転攻勢を続け、その規模を拡大していくつもりだと宣言しているが、ウクライナ政府は今回のモスクワ攻撃について公式なコメントは行っていない。だがロシア政府は、モスクワへのドローン攻撃はウクライナによる「テロ攻撃」だと非難している。

今回の攻撃では、ロシアの防空システムの欠陥が露呈したとみられている。

ウクライナ空軍のユーリー・イーナット報道官は24日、ドローンが攻撃した標的のひとつから約300メートル離れたところにあるロシア国防省の庁舎屋上に設置されている対空ミサイルシステム「パーンツィリ」がドローンを撃墜できなかったと指摘した。

上方向の物体しか撃墜できない

イーナットは、「パーンツィリ」が撃墜できるのは水平方向より上にある物体だけであり、より低いところを飛行している物体は撃墜できないと説明。そのため、パーンツィリだけではモスクワ中心部の防空は不可能だと述べた。「丘の上の戦車に低空からドローンが近づいたらどう撃墜するのか興味がある。この建物(ロシア国防省の庁舎)の屋上に設置されている防空システムは、上からくるものを撃墜するようにつくられているため、ビルより低いところを飛行している物体を撃墜することはできない。なんだか奇妙な防空システムだ」

アメリカ出資の「ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー(RFE/RL)」ロシア語サービスのマーク・クルトフ記者によれば、7月に入ってから撮影された複数の写真からは、撮影時点でロシア国防省の庁舎屋上に「パーンツィリ」が設置されたままであることが確認できる。

この件について本誌はロシア国防省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中