モスクワへのドローン攻撃が露呈した「ロシア防空システムの間抜けな弱点」
Ukraine exposes critical flaw in Russia's defenses
ロシアの対空ミサイル「パーンツィリ」(ロシア占領下の東部ルハンスク、1月25日) Alexander Ermochenko-REUTERS
<自分より高いところを飛ぶものしか撃墜できないのに、パーンツィリはプーチンをはじめとする要人邸や中央官庁の屋上に設置されている>
7月24日、ウクライナのドローンがロシアの首都モスクワを攻撃。これによって、ロシアの防空システムに重大な欠陥があることが露呈したと、ウクライナのある軍当局者は指摘した。
ロシア政府は24日、首都モスクワがウクライナのドローン2機の攻撃を受けたと発表。ロシア国防省の建物の近くと商業ビルに被害をもらしたと明らかにした。モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長によれば、この攻撃で犠牲者は出ていない。ウクライナは、ロシアに占領された土地を奪還するために反転攻勢を展開している。
2機のドローンがロシア国防省を標的にしていたのかどうかは分かっていない。ウクライナ国防省情報総局のアンドレイ・ユソフ報道官は、今後も反転攻勢を続け、その規模を拡大していくつもりだと宣言しているが、ウクライナ政府は今回のモスクワ攻撃について公式なコメントは行っていない。だがロシア政府は、モスクワへのドローン攻撃はウクライナによる「テロ攻撃」だと非難している。
今回の攻撃では、ロシアの防空システムの欠陥が露呈したとみられている。
ウクライナ空軍のユーリー・イーナット報道官は24日、ドローンが攻撃した標的のひとつから約300メートル離れたところにあるロシア国防省の庁舎屋上に設置されている対空ミサイルシステム「パーンツィリ」がドローンを撃墜できなかったと指摘した。
上方向の物体しか撃墜できない
イーナットは、「パーンツィリ」が撃墜できるのは水平方向より上にある物体だけであり、より低いところを飛行している物体は撃墜できないと説明。そのため、パーンツィリだけではモスクワ中心部の防空は不可能だと述べた。「丘の上の戦車に低空からドローンが近づいたらどう撃墜するのか興味がある。この建物(ロシア国防省の庁舎)の屋上に設置されている防空システムは、上からくるものを撃墜するようにつくられているため、ビルより低いところを飛行している物体を撃墜することはできない。なんだか奇妙な防空システムだ」
アメリカ出資の「ラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー(RFE/RL)」ロシア語サービスのマーク・クルトフ記者によれば、7月に入ってから撮影された複数の写真からは、撮影時点でロシア国防省の庁舎屋上に「パーンツィリ」が設置されたままであることが確認できる。
この件について本誌はロシア国防省にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。