「プーチンにエルドアンの力を無視する余裕はない...」黒海穀物合意は崩壊の危機...ロシアの離脱とトルコの役割
Battle for Turk Support
ロシアには合意復帰を説得し続けるつもりだ。「ウラジーミル・プーチン大統領は(離脱の)声明とは裏腹に食糧回廊の存続を望んでいると、私は信じる」と、エルドアンは17日に述べた。「ロシア産の肥料と穀物の輸出を再開するために何ができるか(プーチンと)話し合いたい」
かつてトルコのNATO大使を務めたファティ・ジェイランは本誌の取材に対し、「エルドアン大統領は間違いなく説得を重ねるだろう。しばらく交渉が続くはずだ」と予想した。だが早期の合意復帰は期待できないという。
NATOの一員でEU加盟に意欲を見せるトルコはロシアがウクライナに侵攻すると、地中海と黒海をつなぐボスポラス海峡、ダーダネルス海峡をロシアの軍艦が通過することを禁じた。
大量の武器をウクライナに無償供与し、トルコの企業がウクライナにドローン工場を設立することを許可した。6月には捕虜交換でトルコに滞在していたアゾフ大隊の幹部を、戦争終結まで留め置くというロシアとの協定を破ってウクライナに帰国させた。
これまでの態度を翻しスウェーデンのNATO加盟を容認したことにも、ロシアは失望しただろう。
とはいえトルコは昔からロシアと経済的な結び付きが強く、今もその恩恵を受けている。EUやG7諸国が対露制裁に踏み切って以来、ロシアとの貿易は大幅に拡大した。
6月のトルコの輸出額は、年初から約88%増加した。今年1~6月の対露輸出額は49億ドルで、前年同時期の26億ドルから飛躍的に伸びた。
避けたい露との直接対決
関係の変化により、エルドアンは影響力を増した。
「トルコがロシアを必要とする以上にロシアはトルコを必要としていると思う」と、ジェイランは言う。「今のロシアにトルコの力を無視する余裕はない。だが関係が緊張することはあるだろう。ロシアは楽な交渉相手ではない」
合意の復活について、ジェイランはこうみている。「交渉の余地はあり、トルコの主導で妥協点を見いだすことは可能だろう。それが4者──トルコ、国連、ウクライナ、ロシア──の枠組みになるのか、3者あるいは2者間の協定で補い合う枠組みになるのかは分からない」
ロシアが離脱したイニシアティブとはかなり異なる枠組みになると、ジェイランは考える。「異なる条件が盛り込まれるだろう。だがそれを特定するには時期尚早だ」